地域に根差したデジタル地域通貨「ゆでぴ」で大村市の魅力を再発見!

「ゆでぴ」公式サイトキャプチャ

長崎県大村市で誕生したデジタル地域通貨「ゆでぴ」は、地域経済の活性化と市民のつながり強化を目指し、2024年3月に運用を開始しました。

スマートフォンひとつで手軽に利用できる「ゆでぴ」は、キャッシュレス決済はもちろん、子育て支援や地域共助の促進にも貢献する、地域密着型の新しいデジタル通貨です。

この記事では、「ゆでぴ」の仕組みや使い方、導入による効果、そして今後の展望についてご紹介します。

安武 翔太

CONNECT株式会社
経歴:2025 年 4 月より、大村市からの派遣職員としてゆでぴ、おむすび。の運営等に携わる。

Content目次

大村市が「ゆでぴ」を導入した背景と目的

「ゆでぴ」は大村市が抱える課題を解決し、市民の暮らしを豊かにするための重要なツールとして導入されました。

人口増加の裏にある「つながりの希薄化」という課題

空港・高速道路・新幹線が揃い、50年以上連続で人口が増加し続ける大村市は、子育て世帯に特に選ばれる魅力的な都市です。

しかし、その一方で、人と人、人とまちのつながりが希薄化し、自助や公助のみに頼りがちな状況が生まれていました。

この課題に対し、市はデジタルの力を活用し、あらゆる立場の人がつながり支え合う「全市民参加型コミュニティ」の実現を目指す「しあわせ循環コミュニティ事業」を2023年よりスタートしています。

市民参加と地域経済循環を促進する「ゆでぴ」の役割

大村市ポータルアプリ「おむすび。」キャプチャ

※画像引用:大村市公式ホームページ

「しあわせ循環コミュニティ事業」の一環として、2024年3月に大村市ポータルアプリ「おむすび。」が提供開始されました。

このアプリを入口として、「地域助け合いアプリ」「子育て支援アプリ」、そしてデジタル地域通貨「ゆでぴ」の各サービスがスタート。

「ゆでぴ」は、これらのサービスと連携し、「共助ポイント」や「子育てクーポン」などのプラットフォームとして重要な役割を担っています。

また、市内経済の循環による活性化、市からのポイント付与を通じた市民参加のまちづくりへの寄与も目的としています。

名称は、落花生を塩ゆでした大村名物「ゆでピー」にちなんだもので、市民に愛される地域通貨になってほしいという願いが込められています。

「ゆでぴ」の仕組みと利用方法

「ゆでぴ」は、スマートフォンひとつで手軽に利用できるデジタル地域通貨です。その具体的な仕組みと利用方法を見ていきましょう。

スマートフォンで簡単決済!「ゆでぴ」の利用方法

「ゆでぴ」支払い方法キャプチャ

画像引用:「ゆでぴ」公式サイト

「ゆでぴ」は、スマートフォンを使ったデジタル地域通貨(電子マネー)であり、QRコード決済方式を採用しています。

利用可能な市内加盟店で支払う際、店舗に設置されたQRコードをアプリで読み取って決済を完了させます。

支払い手順は以下の通りです。

  1. レジで「ゆでぴで支払います」と伝えます。
  2. ホーム画面の「支払う」ボタンをタップし、店舗のQRコードを読み込みます。
  3. 支払い金額を入力し、確認画面をお店のスタッフに見せながら、画面下部のスライドを左右に動かして支払いを実行します。
  4. 決済音「ゆでぴっ!」が鳴り、支払い完了画面をスタッフが確認したら決済完了です。

チャージ方法とアカウント種別

「ゆでぴ」チャージ方法キャプチャ

画像引用:「ゆでぴ」公式サイト

「ゆでぴ」へのチャージは、十八親和銀行の口座やセブン銀行ATMから行うことができます。また、アカウントの種別によって利用できる機能や限度額が異なります。

アカウント種別による機能の違い

「ゆでぴ」アカウントには、「ID非連携ゆでぴアカウント」「ID連携ゆでぴアカウント」「ID連携口座振替式ゆでぴアカウント」の3種類があります

これらは、「めぶくID」の連携状況や口座振替登録の有無によって分かれ、それぞれチャージ方法、送金機能、支払い限度額、コイン・ポイントの有効期限が異なります。

アカウント種別 チャージ方法 送金 換金 コイン有効期限 ポイント有効期限 支払い限度額(1回あたり/1日あたり) 送金限度額(1回あたり/1ヶ月あたり)
ID非連携ゆでぴアカウント セブン銀行ATM 不可 不可 最終利用日から1年 付与日から1年 5万円/5万円 不可
ID連携ゆでぴアカウント セブン銀行ATM コインのみ可 不可 最終利用日から5年 付与日から1年 30万円/30万円 10万円未満/10万円未満
ID連携口座振替式ゆでぴアカウント セブン銀行ATM、十八親和銀行口座振替 コインのみ可 不可 最終利用日から5年 付与日から1年 50万円/100万円 10万円未満/30万円未満

※参考:大村市公式ホームページ
※キャンペーンなどで受け取ったポイントは、有効期限が異なる場合があります。

チャージ方法の詳細

  • 銀行口座チャージの場合
    アプリで「チャージ」ボタンをタップし、「銀行口座」を選択します。チャージしたい金額を入力し、チャージの実行で完了です。
    ※事前に「めぶくID連携」が必要です。
    ※口座情報は1年ごとに再登録が必要で、チャージ画面で有効期限を確認できます。
  • セブン銀行ATMチャージの場合
    アプリで「チャージ」ボタンをタップし、「セブン銀行ATM」を選択します。チャージしたい金額を入力し、セブン銀行ATMにて現金を入金することでチャージが完了します。

幅広い店舗で使える「ゆでぴ」

「ゆでぴ」は、市内約340店舗(2025年8月現在)の加盟店で利用できます。

スーパーマーケットや飲食店は勿論、美容室やクリーニング、タクシー会社など、幅広い業種が参画しており、日常のあらゆるシーンで便利に活用できます。

加盟店は、アプリのホーム画面下の「探す」をタップし、位置情報やカテゴリーから検索可能です。

コインの送金機能で広がる利便性

「ゆでぴ」は、コインの送金機能も備えています。コインを受け取る側のQRコードを読み取り、送金金額を入力することで簡単に送金が可能です。

ただし、この機能は「めぶくID」を連携済みの「ID連携ゆでぴアカウント」と「ID連携口座振替式ゆでぴアカウント」のみが利用できます。

「ゆでぴ」の運用状況と利用者層

「ゆでぴ」は、運用開始からわずかな期間で多くの市民に利用され、地域経済に大きな影響を与えています。

順調な利用者数と決済総額の推移

2025年8月現在、利用者は約19,000人に達し、リリースからわずか1年半で、大村市の約5人に1人が使っているデジタル地域通貨になりました。

「ゆでぴ」を利用する主な層

利用者の年齢層は30代から50代が最も多く、全体の約70%を占めています。男女比では女性が約65%と、女性層の利用が活発であることがうかがえます。

「ゆでぴ」がもたらす効果と今後の展望

「ゆでぴ」は、経済効果だけでなく、地域コミュニティの活性化にも貢献しています。

地域経済と社会に与えるポジティブな影響

「ゆでぴ」は、様々なイベントでのポイント活用によるイベント活性化や、妊婦支援給付金などの給付に対するインセンティブ付与を通じて、地域経済の活性化に貢献しています。

また、加盟店からは、新たな客層の開拓につながったという声も聞かれます。

官民連携による強固な運営体制

「ゆでぴ」の運用は、自治体、商工会議所、金融機関、地元企業などが力を合わせて設立した官民連携会社「CONNECT株式会社」が担っています。

これにより、自治体主催のキャンペーンだけでなく、民間団体や企業主催のキャンペーンも実施されており、より「ゆでぴ」の利用機会が広がっています。

デジタルデバイド対策と利用促進への取り組み

大村市ではデジタル遠隔窓口の設置や、市役所へのサポートブースの設置などにより、高齢者をはじめとするIT機器利用に不慣れな方への支援を行っています。

また、利用促進のためにSNSを活用した情報発信や地域イベントでのPR活動、各種団体への説明会などを積極的に実施しています。

さらなる進化を目指す「ゆでぴ」の未来

「ゆでぴ」は今後、お店での支払いに限らず、町内会費の集金や募金への活用など、あらゆるシーンでの利用を検討しています。

地域に根差したデジタル通貨として、市民の生活をより豊かに、そして地域コミュニティをより強固にするための進化を続けていきます。

まとめ

大村市のデジタル地域通貨「ゆでぴ」は、単なるキャッシュレス決済を超え、希薄化する地域コミュニティの課題を解決し、市民のつながりを強化する役割を担っています。

「しあわせ循環コミュニティ事業」の中核として、子育て支援や共助の促進、地域経済の活性化に貢献。官民連携の運営体制とデジタルデバイド対策により、幅広い世代に利用が広がり、着実に市民生活に浸透しています。

今後、利用シーンのさらなる拡大を目指し、地域に不可欠なインフラとしての進化が期待されます。

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