雪国に息づく温もりをデジタルでつなぐ「野沢温泉スタンプ会ゆ~ゆ~カード」

ゆ~ゆ~カード

長野県北東部に位置する野沢温泉村は、豊かな自然と情緒あふれる温泉街で知られています。
この村では、地域経済の活性化と、村民と観光客の交流促進を目的として、独自の地域通貨「野沢温泉スタンプ会 ゆ~ゆ~カード」が広く活用されています。

「ゆ~ゆ~カード」は、従来のポイントカードを進化させたもので、電子マネー機能を備えたICカードです。

村内のさまざまなお店で利用でき、地域に根ざした便利な決済手段として親しまれています。

ゆ~ゆ~カードのアプリ

▲「野沢ゆ~ゆ~」アプリ

羽入田 昌明

平成13年に長野県内の商工会に入り、平成21年から野沢温泉商工会に勤務。商工会の経営指導員として地域の中小企業、小規模事業者の経営に関する相談や指導を行う。

Content目次

「ゆ~ゆ~カード」とは?その仕組みと特徴

野沢温泉スタンプ会が運営する「ゆ~ゆ~カード」は、村内の加盟店でのお買い物でポイントが貯まるだけでなく、現金をチャージして電子マネーとしても利用できる便利なカードです。

従来のポイントカードから電子マネーへ

以前は磁気カード式のポイントカードとして親しまれていましたが、機器の老朽化に伴い、新たなシステムの導入が検討されました。

その結果、単なるポイントカードの更新にとどまらず、キャッシュレス決済や地域通貨としての機能も備えた、電子マネー対応のICカードシステムへと生まれ変わりました。

ゆ~ゆ~カードのアプリ

▲「野沢ゆ~ゆ~」アプリ

便利な利用方法

「ゆ~ゆ~カード」は、加盟店に設置されたタブレット端末にICカードをかざすことで、ポイントの付与や電子マネーのチャージ、チャージ済み電子マネーでの支払いが可能です。
さらに、スマートフォンアプリとの連携機能も備えており、アプリに表示されるQRコードを店舗の端末に読み取らせることで、カードと同様の操作が行えます。
これにより、より手軽で便利に「ゆ~ゆ~カード」を利用できるようになりました。

誰でも使える地域通貨「ゆ~ゆ~カード」

「ゆ~ゆ~カード」は、野沢温泉村に住む方はもちろん、村外の近隣住民や観光客でも利用できます。

2025年7月時点で、村内には飲食店、土産店、小売店など多様な業種の31店舗が加盟しており、「ゆ~ゆ~カード」1枚でさまざまなお店での買い物が可能です。

野沢温泉スタンプ会加盟店一覧

画像引用:ゆ~ゆ~カード(公式サイト) - 野沢温泉商工会

また、グループで1枚のカードを共有するなど、利用方法にも柔軟性があります。

運営を支える地域内の連携

「ゆ~ゆ~カード」の意思決定と運営は野沢温泉スタンプ会が行い、会計や精算といった実務は野沢温泉商工会が担当しています。

運営費用は、スタンプ会加盟店の会費と、ポイント付与のために加盟店が購入するポイントの売上で賄われています。地域内の組織が連携し、この地域通貨を支えているのです。

「ゆ~ゆ~カード」の現状と今後の展望

導入から一定期間が経過し、「ゆ~ゆ~カード」は村民や観光客に利用されていますが、いくつかの課題も見えてきています。

利用状況と利用者の声

ICカードは現在、約3,500人に所持されていますが、実際に電子マネーとしてチャージし、利用している人は全体の1割未満にとどまっています(2025年7月時点)。
主に利用されているのは、電子マネーでの支払いを積極的に推奨している飲食料品店や小売店など、数店舗に限られており、利用者の中心は40代から60代の村内在住者です。

利用者からは、電子マネーの有効期限が6か月と短いことや、店舗スタッフのタブレット操作に不慣れな場合、スムーズに利用できないことなどが課題として挙げられています。

加盟店が抱える課題

加盟店側からは、特に高齢の従業員や機械操作が苦手な従業員にとって、タブレット端末の操作が難しいという声があります。

これにより、顧客への対応に課題が生じているようです。未加入の店舗からは、会費や利用料、会計業務の増加への懸念が加入を見送る理由として挙げられています。

操作性の改善とサポート体制の強化

これらの課題に対し、野沢温泉スタンプ会ではタブレット端末の操作画面を、よりシンプルで分かりやすいものに改修する予定です。
また、操作説明会の実施などを通じて、加盟店へのサポート体制も強化しています。デジタルデバイド(情報格差)への対応としては、商工会が窓口となり、問い合わせ対応などの支援も行っています。

地域通貨としての今後の展望

現時点では、地域経済への定量的な効果や社会的な効果は大きく現れていないものの、すでに村に浸透しているポイントカードを基盤としている点が、他の地域通貨との差別化ポイントといえます。

今後は、地元のスキー場など観光資源との連携も検討されており、観光客の利用促進や村全体のキャッシュレス化推進に向けた取り組みが期待されています。

さまざまな課題に取り組みながらも、雪国ならではの温かいコミュニティとデジタル技術を融合させたこの地域通貨は、野沢温泉村の未来をより豊かにしていく可能性を秘めています。

「ゆ~ゆ~カード」は、地域に根ざした持続可能な仕組みとして、これからも進化が期待されます。

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