岡谷市地域通貨「Okaya Pay」:地域経済を活性化するデジタルツール

岡谷市地域通貨「Okaya Pay」:地域経済を活性化するデジタルツール アイキャッチ

長野県岡谷市が発行する地域通貨「Okaya Pay」は、単なる決済手段を超え、地域経済の活性化、コミュニティの強化を目指す、まちづくりのツールです。

地域内での資金循環を促し、持続可能な地域経済の構築を目指しています。「Okaya Pay」の歴史、特徴、そして未来について解説します。

清水 千大

2018年より岡谷商工会議所に勤務。現在は商業振興の他、地域・観光振興の業務を担当。「OkayaPay」導入前の構想から現在も担当しており、デジタル地域通貨普及に向けて取り組んでいる。

Content目次

Okaya Payとは?地域経済を循環させる仕組みと特徴

「Okaya Pay」は、地域内での資金循環を促進するために設計された地域通貨です。

Okaya Payの券面イメージ

ポイントと電子マネーを融合させた独自の仕組みにより、利便性を高めながら地域経済の活性化を目指しています。

ポイントと電子マネーの融合:Okaya Payの利便性

「Okaya Pay」は、ポイントカードと電子マネーの機能を併せ持つ便利なカードです。

Okaya Payの便利な使い方

引用:OkayaPay公式サイト

買い物のたびに100円(税抜)につき1ポイントが付与され、ポイントは1ポイント=1円で利用できます。現金での買い物でもポイントが付与されるため、電子マネーの利用に慣れていない方も気軽に利用開始できます。

電子マネーは事前にチャージすることで利用でき、お釣りのやり取りの手間が省けます。カードタイプに加え、スマートフォンアプリも提供されており、利便性が向上しています。

地域内経済循環:Okaya Payが生み出す好循環

一般的なキャッシュレス決済では、手数料が地域外に流出してしまうという課題があります。「Okaya Pay」は、この課題を解決するために地域内で独自に運営。

手数料は岡谷商工会議所に支払われ、地域ポイント還元やキャンペーン実施費用に充当されます。これにより、地域内での資金循環を促進し、地域経済の活性化に貢献しています。

Okaya Payの使い方

Okaya Payを活用するためには、初回の登録・設定から具体的な利用方法まで、いくつかのステップがあります。以下の流れに沿って利用方法をご紹介します。

Okaya Payの利用登録方法

  1. カード型の発行: 地元のOkaya Pay取扱店または岡谷商工会議所でカードを発行できます。カードは申し込み不要、発行手数料無料で手に入れることができます。
  2. スマートフォンアプリのダウンロード: スマートフォンをお使いの方は、App StoreまたはGoogle Playで「Okaya Payアプリ」をダウンロードし、インストールします。
  3. アカウント作成: アプリをダウンロード後、メールアドレスや個人情報を登録してアカウントを作成します。

 

Okaya Payの利用登録方法1
Okaya Payの利用登録方法2

▲OkayaPayアプリ

チャージ方法:Okaya Payの残高を増やす

  1. 店舗での現金チャージ: OkayaPay取扱店で現金を使ってチャージすることができます。チャージした金額は即座に反映されます。
  2. アプリでのチャージ:アプリを利用してクレジットカードまたはPayPayからチャージすることができます。現金が手元になくてもチャージができます。

 

Okaya Payのチャージ方法

引用:岡谷商工会議所資料

買い物での利用方法

店舗での支払い: Okaya Pay取扱店で決済する際、レジで「Okaya Payで」と伝えます。カードまたはアプリに表示されているQRコードを専用端末で読み取り、事前にチャージした電子マネー及びポイントを使用して支払います。

ポイントの貯め方・使い方: 買い物金額に応じて、1ポイント=1円相当のポイントが付与されます。電子マネーで支払った際はそのまま付与され、現金で支払った際はカードまたはアプリに表示されているQRコードを専用端末で読み取りポイントを付与します。貯まったポイントは次回以降の買い物で使用可能です。

残高やポイントの確認方法

  • カード利用者の場合: 店舗の端末で残高を確認できます。また、取扱店のレシートにも利用後の残高が印字されます。
  • アプリ利用者の場合: アプリのホーム画面または「残高確認」メニューから、電子マネー残高とポイント残高をリアルタイムで確認できます。

 

Okaya Pay誕生の背景:岡谷スタンプ協同組合の軌跡とデジタル化への挑戦

岡谷市で地域経済を支え続けた岡谷スタンプ協同組合。その長い歴史と地域への貢献を振り返りながら、Okaya Pay誕生の背景を紐解きます。

長きに渡る地域貢献:岡谷スタンプ協同組合の歴史

岡谷市にはかつて、全国に誇る地域通貨の成功事例がありました。昭和46年に設立された岡谷スタンプ協同組合は、最盛期には530店舗もの取扱店を擁し、「日本一のスタンプ会」と評されるほどでした。

岡谷スタンプ協同組合

引用:岡谷スタンプ協同組合Facebook

昭和55年には発行額2億円を超える実績を誇り、地域経済に大きく貢献しました。しかし、時代の変化とともに取扱店は減少。平成15年にはスタンプシールからカード化へ移行するなど、ニーズへの対応を続けましたが、2023年5月に解散という選択に至りました。

デジタル化への転換:地域経済活性化への新たな挑戦

岡谷スタンプ協同組合は、設立50周年を迎えるにあたり、新たなサービスへの移行を計画していました。折しも国がキャッシュレス化を推進する動きを見せていたことから、地域ポイントカードとキャッシュレス決済を組み合わせたサービスの検討を開始しました。

岡谷商工会議所に2019年に提出された具体的な研究を求める要望書を受け、さまざまな事業者の提案を比較検討した結果、凸版印刷株式会社(現TOPPANデジタル株式会社)の地域Payを採用することを決定しました。

採択の決め手となったのは、基幹サービスの安定性、広域展開の可能性、そして法令順守への配慮でした。

Okaya Payの現状と課題:さらなる発展に向けて

地域内での経済循環を促進する重要な取り組みである「OkayaPay」の現状と、今後の展望を見ていきます。

利用状況と取扱店:着実な成長とさらなる拡大へ

「Okaya Pay」は2020年4月にサービスを開始しました。取扱店数は2025年2月時点で80店舗まで拡大し、現在も増加傾向にあります。

Okaya Payを使えるお店のマップ

引用:OkayaPay公式サイト

暮らし、ファッション、美容・健康、フード、グルメなど、さまざまな業種の店舗で利用可能です。年間の電子マネー利用額とポイント発行額から推計すると、約3億円もの経済効果が生まれています。

Okaya Payを使える店舗例

引用:OkayaPay公式サイト

長野県が推進する「しあわせバイ信州運動」にも参画し、地元商店の利用促進に繋げています。

しあわせバイ信州 公式サイトのスクリーンショット

引用:しあわせバイ信州公式サイト

運営体制:岡谷商工会議所による地域一体型の運営

岡谷商工会議所内に設置されたOkaya Pay運営室が中心となり、運営されています。運営室長、運営業務長、運営係長、係員からなる専属チームに加え、取扱店の拡充などは全職員で対応するなど、地域一体型の運営体制が構築されています。

また、端末導入費用についても、国の補助金や独自の補助金制度を活用することで、取扱店の負担軽減を図っています。

広報活動:地域密着型の情報発信

地域経済の活性化を目指し、Okaya Payは積極的な広報活動を行っています。地元紙への定期的な広告掲載や、地域ポータルサイトでのコラム掲載など、地域密着型の情報発信に力を入れています。

デジタルが苦手な方でも利用しやすいよう、カードを中心としたサービス設計となっている点も特徴です。

課題と展望:広域展開とさらなる利用促進へ

現状の課題としては、キャッシュレス決済そのものの浸透が進んでいないこと、大手決済サービスと比較した際の利用時のわずらわしさなどが挙げられています。

また、利用者、事業者双方にとってのメリットの明確化、他決済サービスとの差別化も課題と言えるでしょう。

今後は、諏訪地域6市町村での広域展開を検討しており、周辺市町村との調整を進めています。域外からの来訪者向けのサービス展開も視野に入れ、さらなる利用促進を目指しています。

Okaya Payの未来:デジタル地域通貨の可能性

「Okaya Pay」は、単なるキャッシュレス決済手段ではなく、地域経済の活性化、コミュニティの活性化に貢献するツールとしての役割を担っています。

地域独自の通貨として、地域内での資金循環を促し、持続可能な地域経済の構築に貢献する「Okaya Pay」。その未来には、デジタル地域通貨の可能性が広がっています。

よくある質問

Q1:市民以外でも利用できますか

A1:岡谷市民以外も利用可能です。また、観光客など一時的に岡谷市内の店舗を利用する方を対象とした「Okaya Travel Card」という電子マネー使い切り型のプリペイドカードもあります。

Okaya Travel Cardの券面イメージ

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