宮崎県延岡市の地域通貨「のべおかCOIN」とは?まちづくりと経済活性化を両立する新たな取り組み
2025.07.29

デジタル化が進み、キャッシュレス決済が当たり前になりつつある現代。そんな中、地域経済の活性化と市民のまちづくり参加を同時に促進する独自の取り組みとして、宮崎県延岡市で地域通貨「のべおかCOIN」が誕生しました。
この記事では、「のべおかCOIN」の魅力や仕組み、そして延岡市の目指す未来についてご紹介します。
お話を聞いた方
佐藤健央
2018年延岡市役所に入庁。2022年度から商業・駅まち振興課の担当者として主に延岡市独自の地域通貨「のべおかCOIN」の普及等に従事。
Content目次
「のべおかCOIN」が生まれた背景
延岡市は、工業都市として一定の所得を地域外から得ている一方で、市民の消費が市外へ流出しているという課題を抱えていました。特に生産年齢人口の減少が進む中、この傾向は今後さらに強まり、地域経済の縮小を招く懸念があったのです。 こうした状況を打開し、地域内での消費を促進して経済の好循環を生み出すツールとして、「のべおかCOIN」は2021年8月1日に運用を開始しました。単なる決済手段にとどまらず、市民がまちづくり活動に参加するきっかけを作り、地域全体を盛り上げることを目指しています。
「のべおかCOIN」の仕組みと使い方
「のべおかCOIN」は、スマートフォンアプリを活用した電子マネー(地域通貨)と地域ポイントの二つの機能を兼ね備えています。
便利なマネー機能で市内消費を促進
「のべおかCOIN」のマネー機能を使えば、延岡市内の約460店舗でキャッシュレス決済が可能です。チャージは加盟店に設置された専用端末で行うことができ、現金を持ち歩かなくてもスマートフォン一つでスムーズな買い物ができます。 これにより、市民は市内で気軽に消費活動を行うことができ、市内の経済活性化に繋がっています。累計チャージ額は16億円を超えるなど、多くの市民に利用されています。ポイント機能でまちづくりに参加しよう
「のべおかCOIN」のもう一つの特徴が、地域ポイント機能です。これは、単に買い物でポイントが貯まるだけでなく、市民が市のイベントやボランティア活動に参加することでもポイントが得られる仕組みです。 例えば、河川清掃や草刈り、文化・スポーツイベントへの参加などが対象となります。 貯まったポイントは1ポイント=1円として、市内の加盟店での支払いに利用できます。また、ポイントを使ってまちづくり活動を行う団体へ寄付したり、商品交換や抽選に参加したりすることも可能です。 これにより、市民は日々の生活の中で自然とまちづくりに参加する意識を高め、地域への愛着を深めることができます。運営体制と今後の展望
「のべおかCOIN」の発行主体は延岡市ですが、2025年度の運営は委託を受けた「のべおかCOIN加盟店会」が行っています。市と地域の事業者が連携することで、地域の実情に即した運営が行われています。 今後は、現在の加盟店でのチャージに加え、新たなチャージ方法の導入も検討されています。これにより、さらに多くの市民が「のべおかCOIN」を利用しやすくなることが期待されます。利用者の声と加盟店の声
「のべおかCOIN」は、多くの利用者から好評を得ています。特に、様々なイベントに参加することでポイントが付与される仕組みは、まちづくりへの参加を促す良いきっかけとなっています。 加盟店からは、他の電子決済と比べて手数料が安価であることがメリットとして挙げられています。導入のハードルが下がり、地域経済の活性化に繋がっています。 ただし、未導入の店舗の中には、専用端末の操作やQR決済に不慣れな高齢の店主が加入に消極的なケースもあるようです。これに対しては、電話サポートや対面での操作支援といったデジタルデバイド対策が講じられています。観光客誘致にも活用
「のべおかCOIN」は、観光客誘致にも活用されています。西日本高速道路株式会社との連携協定により実施された「のべおか旅っチャ」では、高速道路のサービスエリアに設置されたガチャガチャで、「のべおかCOIN」ポイントがもらえるチケットを配布しました。 これにより、高速道路を利用する旅行者が延岡市を訪れ、市内でポイントを利用するきっかけを作り出しました。