岡山県新見市「新見市オリジナルICOCA」とは?市内の消費を喚起し、地域活性化を目指すJR西日本ICOCA活用型地域通貨

岡山県北部に位置する新見市は、豊かな自然と歴史文化が息づくまちです。新見市では、地域経済の活性化とキャッシュレス化の推進を図るため、JR西日本が発行するICOCAを活用したユニークな地域通貨が導入されています。それが「新見市オリジナルICOCA」です。
お話を聞いた方
志水洋文
平成27年度に新見市役所に入庁し、令和7年度より商工観光課へ配属となり、「新見市オリジナルICOCA」の普及促進等に従事。
Content目次
「新見市オリジナルICOCA」導入の背景と目的
新見市がJR西日本のICOCAを活用した地域通貨の導入に踏み切った背景には、新見市特有の経済状況と、それに対する課題意識がありました。
新見市産業連関表によると、市民の消費活動において、食料品、日用雑貨、衣料品といった品目で市外での消費が比較的多い傾向が見られました。
具体的には、食費の約25%、日用雑貨の約33%、衣料品の約73%が市外で消費されています。そこで市内の消費を喚起することが、地域経済活性化の重要な鍵と考えたのです。

画像引用:2018年新見市産業連関表
新見市は、地域内の経済循環を促進する手段として、地域通貨の導入を検討しました。数ある選択肢の中から、すでに多くの市民に馴染みがあり、交通系ICカードとして高い普及率を持つJR西日本のICOCAに着目。ICOCAに地域ポイント機能を追加することで、持続性・安全性が高く、地域内での消費を促す仕組みを構築できると考えました。
このような背景から、2022年10月より、「新見市オリジナルICOCA」の発行を開始しました。「新見市オリジナルICOCA」は、既存のICOCAに「にーみんポイント」という地域ポイント機能を追加したもので、地域におけるキャッシュレス化の推進も同時に目指しています。
「新見市オリジナルICOCA」の仕組みと利用方法
「新見市オリジナルICOCA」は、単なる地域ポイントカードではありません。小さなお子様や高齢の方など、スマホを持っていなくても誰でも利用が可能便利なカードです。もちろん、JR西日本のICOCAとして使えるので、ショッピングだけでなく、鉄道やバスなど公共交通機関でも活用できます。
2つの支払い方法とポイント付与でお得に利用

画像引用:新見市HP
「新見市オリジナルICOCA」には、「ICOCA電子マネー」と「にーみんポイント」という、2つの支払い方法があります。市内の加盟店では、どちらの方法でも支払いが可能です。
さらに、加盟店でICOCA電子マネーを利用して支払いをすると、月額利用額の1%が「にーみんポイント」として翌月末に付与されます。市内で買い物をすればするほどポイントが貯まる、お得な仕組みと言えるでしょう。
どこで使える? 利用可能店舗とチャージ方法

画像引用:新見市HP
「新見市オリジナルICOCA」で貯めた「にーみんポイント」は、新見市内の加盟店での支払いに利用できます。2025年5月現在、約100店舗の市内加盟店で利用可能です。
「にーみんポイント」の利用は市内加盟店のみですが、ICOCA電子マネーとしては、ICOCAが利用できる全国の店舗や交通機関で利用できます。
また、市からの給付金や支援金をポイント化して支給できる仕組みがあり、支給されたポイントはそのまますぐに使うことができます。
ICOCA電子マネーのチャージは、JR駅の券売機や、コンビニエンスストアのレジ、セブン銀行ATMで手軽に行えます。さらに新見市内では、にいみプラザ、フレスタ新見店、ジュンテンドー新見店、郵便局(千屋、刑部、万歳、野馳、井倉、豊永)、市役所本庁舎など、市内各所に設置されたチャージ機でも利用可能です。
市民なら誰でも! 対象者と取得方法
「新見市オリジナルICOCA」は、新見市民を対象に発行しています。2025年度に新たに新見市民となった方(転入・出生)には、新見市のマスコットキャラクター・にーみんが描かれたオリジナルデザインのICOCAが無料で発行されます。
一方、2024年度以前から市民の方は、ご自身でICOCAを用意した上で、新見市商工観光課窓口で手続きが必要です。
また、2024年5月から「新見市オリジナルICOCA」をスマートフォンで利用することも可能になり、より便利に使えるようになっています。

画像引用:新見市HP
利用状況と運営体制
「新見市オリジナルICOCA」は、多くの市民に利用されています。2025年5月末時点で、利用者数は約25,000人、加盟店も108店舗に広がっています。全市民が対象であるため、利用者の年齢層や性別構成は、新見市の人口構成とほぼ同じ割合です。
運営は、新見市観光協会と新見市が主体となって行っています。JR西日本グループからは、システム運用や管理面での助言を得ながら事業を進めています。運営費用は、主に自治体の予算と、地域ポイント決済端末の利用手数料です。
「新見市オリジナルICOCA」による効果
「新見市オリジナルICOCA」の導入は、市内経済に一定の効果をもたらしています。2024年度には、約2億円分の「にーみんポイント」と、約3億円のICOCA電子マネーが市内で利用されました。市内消費が喚起され地域経済の活性化に貢献していると言えるでしょう。
また、ICOCAを活用した地域通貨であることから、地域におけるキャッシュレス化の推進にも繋がっています。さらに、市が支給する補助金等の一部を「にーみんポイント」で付与するなど、行政サービスへの活用も始まっており、迅速な給付対応やDX(デジタルトランスフォーメーション)の推進といった副次的な効果も生まれています。
利用者の利便性を高める機能
「新見市オリジナルICOCA」は、単に決済やポイント付与ができるだけでなく、利用者の利便性を高めるための機能も提供しています。
「新見市オリジナルICOCA」の所有者は、専用のマイページに登録することで、さらに便利にカードを活用できます。マイページでは、現在の保有ポイントや有効期限、失効予定のポイントなどを簡単に確認できます。また、過去の利用履歴を振り返ることも可能です。これらの情報は、賢くポイントを使う上で役立ちます。

マイページへの登録は、メールアドレスとカード情報、生年月日を入力するだけで完了します。登録しなくてもポイントは利用できますが、残高や有効期限をいつでも確認できるマイページ機能は、ぜひ活用したい機能と言えるでしょう。
今後の展望
新見市では、「新見市オリジナルICOCA」のさらなる利用拡大と機能拡充を目指しています。今年度新たにスタートした取組の一つが、市が認可した地域運営組織によるポイント付与です。
地域運営組織が実施するイベントや活動に参加した市民に対し、その団体が直接「にーみんポイント」を付与できる仕組みを導入しており、地域コミュニティの活性化と新見市オリジナルICOCAへの利用促進の相乗効果を期待しています。
まとめ
「新見市オリジナルICOCA」は、JR西日本のICOCAという既存のインフラを活用することで、市民にとって使いやすい地域通貨を実現しています。市内での消費を促し、市内経済を活性化することを目的として導入されたこの仕組みは、多くの市民に受け入れられ、着実に利用が広がっています。
単なる決済手段にとどまらず、お得なポイント還元や行政サービスのDX推進にも貢献する「新見市オリジナルICOCA」は、地域の未来を拓く取組として注目されています。
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