みんなでつくる、広がり続ける地域通貨「ナカペイ」とは?

東京都中野区で使えるデジタル地域通貨「ナカペイ」。単なる決済手段にとどまらず、地域経済の活性化、コミュニティの醸成、そして区民の健康増進までを目指す、新しい仕組みとして注目されています。
2024年9月のリリースから約5ヶ月でダウンロード数68,000、利用店舗数1,300店を超えるなど、区民を中心に急速に広がっています。この記事では、そんな「ナカペイ」の全貌に迫ります。
お話を聞いた方
若林泰一
入庁6年目主任
入庁1年目~6年目まで区民部産業振興課
Content目次
「ナカペイ」誕生の背景とその目的:経済対策から地域課題解決へ
中野区がなぜ独自のデジタル地域通貨を導入したのか、その背景には、地域経済の課題と区政の推進という明確な目的があります。
中野区では、これまでも民間決済業者を活用した経済対策を実施してきました。しかし、その中で課題となっていたのが、区が付与したポイントが区外へ流出してしまうことでした。
「ナカペイ」の導入は、この課題を解決し、区内での消費を促進するための新たな一手でした。地域通貨を単なる経済対策にとどめず、区政のさまざまな課題解決や政策推進のための「動機づけツール」として活用しようという意図も込められています。
イベント参加や健康活動へのインセンティブ付与など、地域通貨を通じて区民の行動変容を促し、より良いまちづくりにつなげようという展望があります。
「ナカペイ」の仕組みと使い方
「ナカペイ」は、スマートフォンアプリを使ったQRコード決済方式のデジタル地域通貨です。
アプリで簡単、キャッシュレス決済
「ナカペイ」は専用のスマートフォンアプリをダウンロードして利用します。アカウント登録後、セブン銀行ATMまたはコンビニエンスストアでチャージが可能です。
プレミアム付ナカペイの販売時にはクレジットカードでのチャージもできます。支払いは、加盟店に設置されたQRコードをアプリで読み取る方式を採用。
店舗側の初期費用や管理負担を軽減し、多くの中小事業者が導入しやすいように工夫されています。

画像引用:中野区公式ホームページ(プレミアム付ナカペイのキャンペーンは終了しています)
区内全域の約1,300店舗で利用でき、スーパーやドラッグストアといった大型店から、飲食店、理容室、美容室まで幅広い業種で利用できます。区内在住・在勤・在学者だけでなく、来街者も利用可能です。
アプリの機能拡充でさらに便利に
基本的な決済機能に加え、加盟店で使えるクーポン機能や、利用者の声を集めるアンケート機能も搭載しています。


▲「ナカペイ」アプリ
特に注目されるのが、給付事業への活用です。ユーザーIDに直接ポイントを付与できる仕組みにより、郵送費などの行政コスト削減にもつながることが期待されています。
広がる利用と多様な効果
「ナカペイ」は、リリースから短期間で多くの利用者を獲得し、地域にさまざまな効果をもたらしています。
利用状況と利用者層
2024年11月の利用開始から約5ヶ月で、アプリダウンロード数は約6万8,000に達し、約15億円が加盟店で決済されました。利用者の約7割は区内在住者ですが、年齢層は40代、50代、30代を中心に、60代の比率が20代よりも高いのが特徴です。
これは、「プレミアム付ナカペイ申込サポート窓口」の開設や区民活動センターでの説明会など、デジタルデバイド対策に力を入れている成果といえるでしょう。
地域経済への貢献と加盟店の声
「ナカペイ」の利用実績がある加盟店は約95%に上り、加盟店の顧客開拓に貢献していると推察されています。
あるパン屋さんでは、「ナカペイ」導入をSNSで告知したところ来店客が増加したという事例もあり、地域経済の活性化に繋がっています。

画像引用:中野北口十字路商店会公式ホームページ
加盟店からは手数料無料への継続要望や管理画面の改善要望が寄せられており、区はこうした声を受けてシステム改修を進めています。
社会効果とユニークな取り組み
「ナカペイ」は単なる決済ツールにとどまらず、地域コミュニティの活性化にも貢献しています。
複数の商店街でイベントの景品として「ナカペイ」を活用する動きがあり、従来の紙の商品券に比べて管理や換金の手間が省けると好評です。

画像引用:ナカペイ専用サイト
また、令和7年度には健康管理アプリと連携した「健幸ポイント」の発行を予定しており、歩数やスポーツイベント参加に応じたポイント付与を通じて、区民の自律的な健康づくりを促進することを目指しています。スマートウェルネスシティの推進という中野区独自の取り組みと連携したユニークな試みです。
今後の展望と「ナカペイ」に込められた想い
「ナカペイ」は、これからも進化を続けていきます。
コミュニティポイントの拡充と給付金への活用
今後の展開として、コミュニティポイントのさらなる拡充や、給付金事業への活用が検討されています。
これにより、地域活動への参加促進や行政サービスの効率化が期待されます。また、ふるさと納税の返礼品としての活用も計画されており、持続可能な事業運営のための歳入確保策として注目されています。
みんなで作り上げる「発展途中のナカ」

「ナカペイ」という愛称とロゴには、「みんなでつくる、広がり続ける発展途中の『ナカ』」という想いが込められています。
利用者の声、加盟店の声に耳を傾けながら、システム改修や機能追加を積極的に行い、多くの人に愛される地域通貨を目指しています。
単なるキャッシュレス決済ではなく、地域経済を潤し、人々のつながりを深め、健康を促進する。中野区の「ナカペイ」は、そんな多角的な役割を担う、まさに「発展途上」の可能性に満ちた地域通貨と言えるでしょう。
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