福岡県みやま市の地域通貨「みやまん・コイン」とは?電気料金や健康増進で貯まるお得な仕組み

みやまん・コイン

みやま市で導入されている地域通貨「みやまん・コイン」は、市民の暮らしや地域経済の活性化を目指して生まれました。

電気料金の支払いや市の事業への参加でコインが貯まり、市内の加盟店で利用できるこの仕組みは、地域内での経済循環を促し、市民の健康増進や環境への意識向上にも繋がっています。

みやまん・コイン

画像引用:みやま市公式ホームページ

末吉 宏章

・1998年(平成10年度)瀬高町役場(合併前)に入庁。
・2021年(令和3年度)商工観光課の係長として、(着任数年間は)コロナ禍における商工・観光事業者の支援事業に携わる。
・デジタル地域通貨「みやまん・コイン」の立上げから普及推進に努める。

Content目次

「みやまん・コイン」の概要と特徴

「みやまん・コイン」は、福岡県みやま市が導入した地域通貨です。主に市の補助事業の給付や特定のイベント参加のインセンティブとして付与され、市内の登録店舗で利用できます。

どんな仕組み?

みやま市と提携している低圧電灯契約者には、毎月の電気使用量に応じて「みやまん・コイン」が付与されます。

これにより、日常生活で発生する電気料金の支払いが、そのまま地域通貨の獲得に繋がり、地域の店舗での消費を促す仕組みとなっています。電気使用量1kWhあたり0.15コインが付与され、1コインは1円として利用可能です。

みやまん・コインの仕組み

画像引用:みやまスマートエネルギーホームページ

利用方法と付与レート

コインは専用アプリ「commoney(コモニー)」を通じて付与されます。電気使用量に付与レート(0.15コイン/kWh)を乗じた額(小数点以下切り捨て)が毎月アプリに付与されます。付与される際にはメッセージで通知が届くため、貯まったコインをすぐに確認できます。

みやまん・コインのアプリ画面

画像引用:電子チケットアプリ「commoney - コモニー」

貯める・使う

電気料金の支払いだけでなく、市の健康ポイント事業や省エネ家電買替事業など、社会貢献活動への参加でもコインが付与されることがあります。貯まったコインは、市内の飲食店や小売店など、「みやまん・コイン」加盟店で利用できます。決済は、アプリに表示されるQRコードを店舗側が読み取る、または店舗のQRコードを顧客が読み取ることで決済が完了します。

みやまん・コインを貯める
みやまん・コインを使う

画像引用:みやまスマートエネルギーホームページ

導入の背景と目的

「みやまん・コイン」は、2022年11月に導入されました。その背景には、キャッシュレス決済の普及が進む中で、地域経済の活性化と地域内での通貨循環を促進する必要がありました。

地域経済の活性化を目指して

主な目的は、地域内外の通貨を地域内で循環させる仕組みを構築することです。市の独自給付事業を現金からデジタル給付に移行することで、市外への通貨流出を抑え、市内経済の活性化を図ります。これにより、加盟店での電子クーポン決済の頻度が高まり、地域のキャッシュレス化定着にも繋がると期待されています。

利用状況と利用者層

2024年度の実績では、約2,000人の利用者がおり、約6,000件の取引が行われました。取引金額は約2,700万円に上ります。

主な利用者と利用店舗

利用店舗は、飲食店と小売店がほぼ大半を占めます。利用者の属性としては、飲食店支援事業のデータでは、女性が63%と多く、年齢層は40代、50代が中心で、市内居住者が73%を占めています。

運営体制と課題

「みやまん・コイン」の運営は、みやま市が主体となって行っています。商工観光課が運営全般を担い、各補助事業の財源はそれぞれの担当課が予算化しています。

運営上の課題と将来の展望

現在の課題は、利用者への浸透です。利用がイベント等でのポイント給付や補助事業に限られており、一部の市民しか利用していない状況です。

加盟店での利用頻度が下がり、地域通貨が忘れられたコンテンツとなる懸念があるため、解決策としてチャージ機能の検討が進められていますが、設置場所や費用面での課題があり、実施には至っていません。

しかし、市はデジタル地域通貨の将来性を重要視しており、今後もキャッシュレス化が進む社会に対応するため、チャージ機能の実装や、送金、見守り機能といった機能拡充を検討しています。

また、市役所内での利用拡大や、2025年度に予定されている「現地決済型ふるさと納税」の実施など、様々な取り組みを通じて「みやまん・コイン」の活性化を目指しています。

地域への効果

「みやまん・コイン」は、地域経済への直接的な貢献だけでなく、社会的な効果も生み出しています。

経済効果と社会効果

経済効果としては、補助金を現金ではなく「みやまん・コイン」で給付することで、市内の事業者への経済波及効果を高めることができています。2023年6月の実績では、約4,000万円が市内の事業者で利用されました。

社会効果としては、健康ポイント事業や省エネ家電買替事業といった、市民の健康増進や環境問題への意識向上に繋がる事業のインセンティブとして活用されています。これにより、単なる決済手段に留まらず、市の様々な政策推進のツールとしても機能しています。

加盟店の声と今後の展開

加盟店からは、市が決済手数料を負担している点がメリットとして挙げられています。他のキャッシュレス決済と比較して、事業者側の負担が少ないことは大きな利点です。

加盟店の要望と市の対応

一方で、チャージ機能がないために流通量が少なく、日常的な決済手段として定着していないという声もあります。加盟店からは、チャージ機能の実装による流通量増加への期待が寄せられています。

市は、これらの声に応えるべく、チャージ機能の実装を検討しており、並行して市役所内の他部署での利用拡大や、観光客向けの旅先納税への活用など、多角的な視点から「みやまん・コイン」の利用促進と機能拡充を進めていく計画です。

スマートフォン相談会を実施するなど、デジタルデバイド対策にも力を入れています。

まとめ

福岡県みやま市の「みやまん・コイン」は、電気料金付与というユニークな仕組みや、市の様々な事業との連携を通じて、地域経済の活性化と市民生活の質の向上を目指す地域通貨です。

まだ運営上の課題はあるものの、市はチャージ機能の実装や多角的な利用拡大策を検討しており、今後の発展が期待されます。

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