徳島県美馬市の「MIMACA」とは?地域経済と市民の健康を支える新しい地域通貨

徳島県美馬市「MIMACA」

徳島県美馬市のデジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」は、県内自治体として初めて導入された取り組みです。

単なるキャッシュレス決済にとどまらず、市民の健康づくりにも寄与するという、ユニークな特徴を備えています。

本記事では、市内経済の好循環を生み出す「MIMACA」について、その誕生の背景、利用方法、これまでの実績、そして今後の展望までを詳しくご紹介します。

増居 裕矢

2019年:美馬市役所入庁・総務課(入札担当)
2020~2021年:農林課(農業振興・家畜伝染病予防担当)
2022~2023年:観光交流課(観光振興・施設管理担当)
2024年~:企業応援課(デジタル地域通貨・工場連携イベント・施設管理担当)

Content目次

地域通貨「MIMACA」とは?

徳島県内で先駆けて導入された「MIMACA」は、どのような目的で生まれ、どのように運営されているのか紹介します。

「MIMACA」の基本情報

項目 内容
運営主体 徳島県美馬市
開始時期 2022年10月1日
通貨単価 1ミマポ=1円
利用方法 専用カード、スマートフォンアプリ「chiica(チーカ)」
加盟店数 約250店舗(うちチャージ協力店 約110店舗)
公式サイト 美馬市デジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」

「MIMACA」の誕生には、二つの大きな目的がありました。

一つは、キャッシュレス決済の普及で接触機会を減らし感染症対策を強化すること、もう一つは、市内でお金が循環する仕組みをつくることです。

これらの目的を実現するため、「デジタル田園都市国家構想交付金」と「新型コロナウイルス感染症対応地方創生臨時交付金」を活用し、美馬市が主導して2022年10月1日に運用を開始しました。

運用開始後には、商工会や市内金融機関と連携して「美馬市デジタル地域通貨普及促進協議会」を設立。市役所だけの視点に偏らず、地域の商店や金融機関など経済の現場に詳しい人々の意見を取り入れ、さらなる普及促進に取り組んでいます。

「MIMACA」の仕組み

画像引用:美馬市デジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」をご利用ください

MIMACAの使い方

「MIMACA」は、市民一人ひとりに専用カードを配布するという手厚いサポートが特徴です。

全市民に届く「カード」と便利な「アプリ」

美馬市では、市民一人ひとりに「MIMACA」の専用カードを送付しており、新たに市民となった方にも随時届けられています。これにより、スマートフォンを持たない方やキャッシュレス決済に不慣れな方でも、すぐに利用を始めることが可能です。

もちろん、スマートフォンをお持ちの方は、専用アプリ「chiica(チーカ)」をインストールすることでも利用できます。アプリを使えば、残高や利用履歴の確認も簡単です。

また、美馬市外にお住まいの方でも、アプリをインストールすればMIMACAを利用することができます。

「MIMACA」の決済方法

画像引用:美馬市デジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」

チャージ(入金)方法

「MIMACA」へのチャージ(入金)は、市内に約110店舗ある「チャージ協力店」の窓口、または全国のセブン銀行ATMで手軽に行えます。

チャージした分は「1ミマポ=1円」として、市内の約250の加盟店での支払いに繰り返し利用可能です。

「MIMACA」のチャージ方法

画像引用:美馬市デジタル地域通貨「MIMACA(みまか)」

数字で見るMIMACAの実績

運用開始から着実に利用を伸ばしてきた「MIMACA」は、地域経済に大きなインパクトを与えています。

運用開始から2025年8月末までの累計決済総額は19億円に達しました。

直近の2024年度だけでも、決済件数は12万件、決済額は約4億8千万円を記録しており、市民の暮らしにしっかりと根付いていることがうかがえます。

利用者の年齢層は50代から70代が中心ですが、スマートフォンアプリの利用者に限ると30代から40代も多く、幅広い世代に活用されています。

利用者と加盟店が感じるメリットと課題

多くの市民に利用される中で、「MIMACA」ならではの利点が見える一方、課題も明らかになっています。

利用者の声

利用者にとって最大の魅力は、市が実施するキャンペーンなどで付与される「行政ポイント」です。現金給付の代わりに「MIMACA」へ直接ポイントが付与されることもあり、お得に買い物ができる点が広く支持されています。

また、スマートフォンアプリ「chiica」を使えば、現金を持ち歩かずに手軽に支払いができ、その利便性は特に30代から40代の比較的若い世代から高く評価されています。

一方で、日常的な利用にあたっての課題も指摘されています。

最も多いのは「チャージ協力店やチャージ可能な手段が少ない」という声です。さらに、全市民に配布されている専用カードは、アプリと違って残高や利用履歴の確認がしづらく、不便に感じるとの意見もあります。

「MIMACA」の使い方

画像引用:MIMACAのアプリでの利用と「アプリ移行」申請について - 【美馬市】行政サイト

加盟店の声

加盟店にとって最大のメリットは、決済手数料がかからないことです。

これにより、手数料負担を懸念してキャッシュレス決済の導入を見送っていた小規模店舗でも、低リスクで導入に踏み切ることができました。

さらに、「MIMACA」の利用者を新規顧客として取り込める点は、売上向上への貢献として好意的に受け止められています。現金管理の手間や盗難リスクが軽減されることも、店舗運営上の大きな利点です。

一方で、課題もあります。まず「決済に時間がかかる」点は、特に昼時など混雑する時間帯には店舗の回転率に影響を与えかねません。

加えて、「MIMACA」の決済端末と既存レジの操作が別々であるため、二度手間や入力ミスが発生する可能性があるという運営上の問題も指摘されています。

課題解決と未来への展望

美馬市は、利用者や加盟店から寄せられる声に真摯に向き合い、サービスの改善を進めています。

課題への具体的な取り組み

「チャージ手段が少ない」という利用者の声に応えるため、美馬市はチャージ協力店の拡大に力を入れています。

協力店にはチャージ額の1%相当をキャッシュバックし、金融機関への振込手数料も全額市が負担するなど、店舗側の負担を最小限に抑える施策を実施中です。

将来的には、銀行口座やクレジットカードから直接チャージできるなど、より便利な機能の拡充も検討されています。

さらに、「MIMACA」を未導入の店舗が抱く「端末操作が難しそう」といった不安を解消するため、丁寧な説明やサポート体制の強化も、今後の重要なテーマとなっています。

「買いまわり」と「健康」で独自の価値を創出

「MIMACA」は、決済機能を活用した独自の地域活性化策を展開しており、その代表例が毎年恒例の「買いまわりキャンペーン」です。

期間中に複数の異なる加盟店で買い物をすると、その店舗数に応じて後日「MIMACA」ポイントが還元される仕組みで、特に中小企業での消費額を押し上げる効果があり、さらには、「この機会に新しいお店へ行ってみよう」と市民が思うきっかけにもなり、市内経済の回遊性向上にもつながっています。

もう一つの大きな柱は、市民の健康づくりへの貢献です。美馬市が推進する「『人生100年時代』美と健康のまちづくり」の一環として、「健康ポイント事業」を実施。

市民は日々のウォーキングや、指定場所での体組成計の測定結果に応じて健康ポイントを獲得でき、それを「MIMACA」の「ミマポ」に交換できます。

お得なポイントが健康意識を高めるインセンティブとなり、「MIMACA」は市民のウェルネスな暮らしを支える重要なツールとなっています。

「MIMACA」のキャンペーン

画像引用:「MIMACA」買いまわりSUMMERキャンペーン! - 【美馬市】行政サイト

まとめ

「MIMACA」は、徳島県で初めて誕生したデジタル地域通貨です。利用者や加盟店から寄せられる声をもとに改善を重ねるだけでなく、「健康づくり」という独自の価値も提供しています。

こうした取り組みにより、美馬市民の暮らしを支える重要な社会基盤(インフラ)へと成長しました。今後も地域経済を牽引する存在として、その活躍が期待されます。

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