北栄町の地域通貨「ほくほくカード」とは?地元を元気にする電子マネー付きポイントカード

お話を聞いた方
小椋秀一 北栄町商工会 事務長
平成12年「鳥取県商工会連合会」に入職、経営指導員として会員企業の経営支援に従事。 平成29年より「北栄町商工会」の事務長となり、令和3年より「ほくほくカード」の立ち上げ、普及にあたる。
Content目次
導入背景・目的
鳥取県北栄町は人口約1万4千人、「名探偵コナン」の作者・青山剛昌さんの出身地として知られるまちです。
北栄町では、地域内消費の拡大と住民のコミュニティ強化を目的に、また、人口減少や商店街の衰退といった課題への対策として、2021年に電子地域通貨「ほくほくカード」が誕生しました。

▲画像引用:北栄町商工会
町内で使える電子マネー機能にポイント制度を組み合わせることで、お金の地域内循環を促し、地元商店の利用促進につなげる狙いがあります。
行政主導のボランティア活動やイベント参加でもポイントが付与される仕組みを採用し、住民の地域活動への参加意欲も高めています。
カードの仕組み・使い方
「ほくほくカード」は、現金をチャージすれば町内の加盟店で電子マネーとして利用でき、さらに支払い額に応じてポイントが貯まる仕組みです。
入会金・年会費は無料で、北栄町民以外の方でも18歳以上であれば発行可能です。
利用方法
カードは北栄町商工会や加盟店の窓口で申し込み、その場で受け取ります。
カード取得後、加盟店で現金をチャージすると電子マネー「ほくほくマネー」として残高が追加されます(チャージ額の約1%がプレミアムとして上乗せ)。

▲画像引用:北栄町商工会
チャージした電子マネーや現金で支払うと、200円ごとに1ポイントの割合でポイントが付与されます。
ポイントの活用
貯まったポイントは1ポイント=1円として次回以降の会計時に利用でき、現金のようにお買い物に充当できます。
また役場主催のボランティアや講座など公共のイベントに参加してもポイントを獲得可能です。

▲画像引用:北栄町商工会
この「公共ポイント」により、買い物以外の地域貢献活動でもメリットが得られるようになっています。なお、ポイントには発行年度から3年度間の有効期限があります。
便利な機能
カードを紛失した際は商工会で再発行(手数料300円)も可能で、万一のときも安心です。
カード会員向けに公式LINEアカウントを活用した電子会員証サービスも開始されており、スマートフォンで残高やポイントを確認したり最新情報を受け取ったりできるようになりました。
利用状況・利用者層
導入から数年が経過し、「ほくほくカード」は北栄町の多くの住民に日常的に利用されています。
現在、町内の加盟店は飲食店や小売店など約80店舗にのぼり、カード会員数も着実に増加して町民の生活インフラとして定着しつつあります。
町内ほぼすべての商店や飲食店、小規模サービス業者まで幅広い加盟店で使えるため、食料品の買い物から飲食店での支払い、生活サービスの利用料まで、この一枚でキャッシュレス決済が完結します。
特に、以下の利用者の年齢層グラフを見てわかるとおり、中高年の利用者にも受け入れられている点が特徴です。

スマートフォンアプリを使った地域通貨が難しい世代でも、カード形式であれば導入しやすく、現金感覚で使えることからシニア層にも普及しました。
一方で、新規加入特典のポイントやキャッシュレスの手軽さは若い世代や観光で訪れた人々にも好評で、町民以外の利用者も増えています。
「名探偵コナン」の町として知られる北栄町を訪れた観光客が記念にカードを作り、滞在中の飲食・買い物に利用するケースも見られます。
経済・社会的効果
「ほくほくカード」の導入により生まれた経済効果として、まず地域内消費の拡大が挙げられます。
ポイント還元やチャージ特典により、住民が地元店舗で積極的に買い物をするようになり、売上が町外へ流出しにくくなりました。
カード払いで得たポイントは再び地元で使われるため、お金が町内で循環し、小規模店にも継続的な利益が生まれています。
社会的な効果としては、住民の結びつき強化が進んだ点が注目されています。
公共ポイント制度を通じて町の清掃活動やイベントへの参加者が増え、「参加すればポイントが貯まるから次も参加しよう」という前向きな声も聞かれます。
カードを介して行政と住民、商店が一体となる機会が増えたことで、地域コミュニティに一体感が生まれました。自分たちの地域通貨を使うことへの誇りや愛着も芽生えています。
また、電子マネー決済の浸透により高齢者にもキャッシュレスへの抵抗感が薄れ、防犯面(現金を持ち歩かない安心感)や衛生面(現金受け渡し減による安心感)でもプラスの効果が出ています。
運営体制・今後の展望
ほくほくカードは北栄町商工会が中心となり運営しており、町も協力して地域ぐるみで支えています。

▲画像引用:北栄町商工会
商工会がカードの発行管理や加盟店サポートを行い、町役場は公共ポイントの付与や必要な財政支援(キャンペーン実施時など)を担うなど、官民連携で円滑な運用体制が構築されています。
今後の展望としては、アプリの操作性向上やアプリでの決済機能導入など、デジタル技術の進歩に合わせた機能拡充が検討されています。
また、近隣自治体との相互利用も検討されており、より便利で広域に活用できる地域通貨へと発展させる構想もあります。
よくある質問
Q. 誰でもカードを作れますか?
A. 北栄町民に限らず18歳以上であればどなたでも作成できます。入会金・年会費は一切かからず、町内の加盟店や商工会で申込用紙に記入して本人確認書類を提示すれば、その場でカードを受け取れます。
Q. チャージや決済の方法は?
A. 現金で加盟店のレジにてチャージできます。チャージした電子マネー(ほくほくマネー)はカードに記録され、会計時にカードを提示して支払います。支払い時にポイントも自動で付与されます。残高やポイント数はレシートやLINE連携の電子会員証から確認可能です。
Q. 貯めたポイントの有効期限は?
A. ポイントは獲得した年度を含め3年度間有効です。有効期限を過ぎたポイントは失効しますので、計画的にご利用ください。
Q. カードを紛失した場合はどうすればいいですか?
A. 速やかに北栄町商工会に連絡してください。所定の手続きを行えばカードの利用停止と再発行が可能です(再発行手数料300円)。再発行後も旧カードの残高やポイントを引き継ぐことができます。
Q. 町外でもカードは使えますか?
A. 基本的にほくほくカードは北栄町内の加盟店専用です。町外では利用できません。ただし町内でカードを作れば、次回訪問時までポイントや残高は保持されますので、観光などで継続的に北栄町を訪れる方にも無駄にはなりません。
Q. チャージしたお金やポイントを現金に戻すことはできますか?
A. カードにチャージした電子マネー残高やポイントを現金に換金することはできません。地域内での消費循環を目的とした仕組みのため、貯まったポイントも含めて町内加盟店で積極的にご利用ください。
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