ばんだいコインとは?福島県磐梯町の地域通貨を徹底解説

福島県磐梯町で利用されている地域デジタル通貨「ばんだいコイン」。
このばんだいコインは、地域経済の活性化や住民のデジタルリテラシー向上を目指して導入されました。
町民だけでなく、観光客やビジネスで訪れる町外の人々も利用できるのが大きな特徴です。
チャージ金額に対して10%のポイントが付与されるお得な仕組みや、住民参加でデザインや名称が決められた背景など、ばんだいコインの魅力や仕組みについて詳しく解説します。
お話を聞いた方
遠藤哲
2001年に磐梯町役場に入庁。建設課や総務課などを経て、2021年 から商工観光業務に従事し、地域デジタル通貨『ばんだいコイン』を活用した地域の活性化や普及促進に取り組んでいる。
Content目次
ばんだいコイン導入の背景と目的
人口約3,100人の小さな町である磐梯町は、「誰もが自分らしく生きられる共生社会の共創」を目標に掲げ、デジタル変革を積極的に推進しています。
その一環として、地域経済の活性化と住民の利便性向上を目指し、地域通貨のデジタル化に着手しました。
デジタル化への第一歩「磐梯町デジタルプレミアムとくとく商品券」
磐梯町では「ばんだいコイン」導入前の2021年度に紙の商品券の販売と同時期に商品券をデジタル化した「磐梯町デジタルプレミアムとくとく商品券」を販売した経緯があります。
企画当初は高齢者への浸透が懸念されましたが、販売開始とともに即日完売となるほどの人気を集め、多くの町民が利用しました。
このデジタル商品券の成功は、町内の事業者によるアプリ決済の経験値を高め、町民のデジタルリテラシーを向上させる大きなきっかけとなったのです。
これらの経験を経て、磐梯町は次のステップとして、町民以外も利用できる地域デジタル通貨の導入を決断するに至りました。
住民参加で生まれた愛着の名称とデザイン
ばんだいコインの名称とアプリのデザインは、住民参加型で決定されました。
地元小・中学生を含む町民や観光客約650名からの投票が行われ、「ばんだいコイン」という名称と、磐梯町のシンボルである磐梯山をイメージしたデザインが選ばれています。

画像引用:磐梯町公式ホームページ
さらに、アプリの決済音には町内の幼稚園児たちの声が採用されるなど、利用者が愛着を持って使えるような工夫が随所に凝らされています。
ばんだいコインの仕組みと使い方
「ばんだいコイン」の利用方法やチャージ方法、お得なポイント制度についてご紹介します。
「ばんだいコイン」は、専用のスマートフォンアプリを利用したQRコード決済方式のデジタル地域通貨です。加盟店に設置されたQRコードをアプリで読み取り、支払いを完了させます。
簡単チャージでお得に利用

画像引用:磐梯町公式ホームページ
「ばんだいコイン」へのチャージは現金のみで、磐梯町内に設置された専用チャージ機や、全国のセブン銀行ATMで行うことができます。チャージできる上限は10万円です。
チャージした現金を1コイン=1円相当として利用できます。
さらに、「ばんだいコイン」の最大の魅力は、チャージ金額に対して10%のポイントが付与される点です。
付与されたポイントは1ポイント=1コインとして支払いに利用できます。ただし、ポイントには有効期限があり、付与上限は10万ポイントとなっています。
また、一部の加盟店ではポイントが利用できない場合があるため、事前に確認が必要です。
利用可能店舗と利用できないもの

画像引用:磐梯町公式ホームページ
「ばんだいコイン」は、磐梯町内の約70店舗の加盟店で利用可能です。
店舗にはシール、のぼり、ポスターが掲示されており、目印となります。最新の加盟店情報はアプリでも確認できます。
役場窓口や公共施設でも利用可能です。各種証明書発行手数料や、町民体育施設、公民館、磐梯山慧日寺資料館、ふれあいセンターの使用料、医療センターや調剤薬局での支払いなどに利用できます。

画像引用:磐梯町公式ホームページ
ただし、町税や上下水道料金の支払い、商品券・たばこ・プリペイドカード・切手・印紙などの購入には利用できません。
また、役場窓口や公共施設ではチャージができず、「ばんだいコイン」と現金の併用はできない点に注意が必要です。
利用状況と利用者層
利用開始から2024年度末までの「ばんだいコイン」アプリのユーザー登録者数は約3,400人に達しました。
2024年度のアプリでの支払額は1億5000万円を超え、地域経済に大きく貢献しています。
主な利用店舗はスーパーが約半数を占め、ガソリンスタンドや道の駅での利用がそれに続いています。
登録ユーザーの約6割は町内在住者で、年齢層は50代と40代で全体の約4割、次いで60代と30代が多く利用しています。男女比は男性が6割、女性が4割となっています。
ばんだいコインがもたらす地域への効果
「ばんだいコイン」の導入が、磐梯町の地域経済や社会にどのような影響を与えているのかを見ていきます。
経済効果と加盟店の声
「ばんだいコイン」の導入後利用額、利用者はともに増加しており、地域経済の活性化に貢献しています。アンケートからは、全体の利用額、利用者ともに増加しているという声が聞かれました。
社会効果と地域コミュニティ
「ばんだいコイン」は、単なる決済手段としてだけでなく、町の各種事業と連携したポイント付与事業を通じて、地域コミュニティへの参加意欲向上にもつながっています。
さらに、イベント開催時にアプリのスタンプラリー機能を活用した周遊イベントを実施することで、新規ユーザーの獲得や利用促進、観光客の周遊促進を図っています。
運営体制と今後の展望
「ばんだいコイン」の運営は、町から委託を受けた一般社団法人が行っています。運営費用は、自治体の予算やふるさと納税などを活用して賄われています。
運営上の課題としては、安定した財源の確保や人材育成が挙げられており、継続的な運用を目指し、サービスの充実に努めています。
今後は、基本的な決済機能、利用者同士の送金機能、ポイント付与機能などに加え、BtoBの支払い機能やマイナンバーカードとの連携なども検討されており、さらなる利便性向上を目指しています。
利用者の声と課題、対策
「ばんだいコイン」の運営上の課題としては、高齢者など一部の利用者から「利用方法がわかりにくい」、「利用通知などが迷惑メールに振り分けられてしまう」といった声があがっていました。
こういった対策として、町の担当窓口で利用方法のサポートを行っており、IT機器の利用に不慣れな方でも安心して利用できるよう配慮されています。
まとめ
福島県磐梯町の地域デジタル通貨「ばんだいコイン」は、住民参加で生まれた愛着のあるデザインと名称、お得な10%ポイント還元、そして町民だけでなく町外の人々も利用できる開かれた仕組みが特徴です。
地域経済の活性化や住民のデジタルリテラシー向上、地域コミュニティの活性化にも貢献しており、今後も機能拡充や利用促進策を通じて、町の地域通貨としてのサービス充実を目指しています。
磐梯町を訪れる際には、ぜひ「ばんだいコイン」を利用して、お得で便利なキャッシュレス体験を楽しんでみてはいかがでしょうか。
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