深谷市地域通貨「ネギー」とは? 導入背景から仕組み、ユニークな活用方法まで徹底解説

深谷市地域通貨「ネギー」とは? 導入背景から仕組み、ユニークな活用方法まで徹底解説

深谷市で生まれた地域通貨「ネギー」。単なる決済手段にとどまらず、地域の課題解決や活性化を目指すこの通貨について、その導入背景から具体的な仕組み、そしてユニークな取り組みまで詳しくご紹介します。

馬場 司斗 お話を聞いた方

2011年に深谷市役所に入庁。企業経営課や道路管理課などを経て、2023年から産業ブランド推進室に所属。地域通貨「ネギー」の担当として、地域経済の活性化や地域課題の解決を目的とした仕組みづくりや普及促進に取り組んでいる。

Content目次

ネギー誕生の背景にある深谷市の課題

深谷市が地域通貨「ネギー」を導入した背景には、深刻な人口減少と高齢化に伴う財政難という大きな課題がありました。

2000年をピークに人口が減少し続け、このままでは将来的に市の経済規模が縮小し、税収が減少する一方で高齢者向けの支出が増加し、財政がひっ迫することが予測されています。

こうした状況を打開するため、深谷市は地域内での経済循環を高めることを目指しました。地域通貨「ネギー」は、市内でしか使えないお金として、地域経済の活性化を促進するツールとして導入されたのです。

地域通貨「ネギー」バナー画像

画像引用:深谷市公式ホームページ

さらに、「ネギー」は経済効果だけでなく、健康イベントへの取り組みなど、地域の課題解決に貢献する市民の行動を後押しする仕組みとしても機能しています。

これは、渋沢栄一の「論語と算盤」の精神にも通じるものであり、道徳と経済の両立を目指しながら、市民が一体となってより良い地域づくりを進めるための価値交換ツールとなっています。

「ネギー」の仕組みと使い方

「ネギー」は、QRコード決済を用いたデジタル地域通貨です。利用者は、スマートフォンアプリまたはQRコード付きカードのいずれかを選択して利用します。どちらか一方のみ利用できる点に注意が必要です。

単位は「negi(ネギー)」で、1ネギーは1円として換算されます。「ネギー」取扱店に設置されたQRコードを読み取るか、利用者のQRコードを店舗側が読み取ることで決済が完了します。

「ネギー」は深谷市内外を問わず誰でも利用できます。日常のお買い物や地域活動への参加など、さまざまなシーンで活用でき、深谷の暮らしにすっと寄り添う便利でカンタンなツールです。

アプリタイプとカードタイプ

ネギーには、アプリタイプとカードタイプがあります。

ネギーの利用タイプ

画像引用:深谷市公式ホームページ

  • アプリタイプ: スマートフォンに「chiica」アプリをダウンロードして利用します。取扱店全店で利用でき、残高や利用履歴をいつでも確認できるため、スマートフォンをお持ちの方にはこちらが推奨されています。
  • カードタイプ: QRコード付きの専用カードです。電子申請や指定窓口、郵送での申し込みで発行できます。

簡単チャージ方法

「ネギー」へのチャージはいくつかの方法があります。

  • セブン銀行ATMチャージ: 全国のセブン銀行ATMでアプリ・カード(磁気テープ付きのみ)共にチャージが可能です。
  • 指定窓口でのチャージ: 道の駅おかべ、道の駅はなぞの、アクアパラダイス パティオなど、市内17箇所の指定窓口で現金でのチャージができます。
  • クレジットカードチャージ: アプリタイプのみ、クレジットカードでのチャージが可能です。安全のため、3Dセキュア認証が必要となります。

チャージ方法についてはこちらから詳しいマニュアルをご覧ください

ポイント還元とお得な利用

「ネギー」は1,000円単位で購入・チャージが可能で、利用額の1%がポイントとして即時還元される仕組みです。

チャージ分はチャージから2年間有効ですが、再度チャージすると有効期間が延長されます。通常ポイントの有効期限は180日間ですが、キャンペーンなどで付与されるポイントは、それぞれ有効期限が異なる場合があります。

チャージ上限額は10万円まで(令和6年12月27日変更)となっており、不正利用防止のため一時的に設定されていますが、利用すれば繰り返しチャージが可能です。

ネギーの広がる活用とユニークな取り組み

「ネギー」は単なる決済ツールとしてだけでなく、深谷市のさまざまな取り組みに活用されています。

地域課題解決を目指す「ネギーチャレンジ」

ネギーチャレンジ

画像引用:深谷市公式ホームページ

「ネギーチャレンジ」は、まちづくりのための市民参加型プロジェクトです。さまざまなチャレンジに参加し、目標を達成すると、「ネギー」のポイント還元率が引き上げられるなどのキャンペーンが行われます。

これにより、従来は行政だけでは難しかった、住民の行動が前提となる課題(例:選挙投票率向上、オンライン申請率向上など)に対し、インセンティブを付与することで改善を図っています。

実際に、選挙の投票率向上などの効果が見られており、参加者からは「市の課題を知るきっかけになった」という声も寄せられています。

想いを届ける「ネギーウィル」

「ネギーウィル」は、「ネギー」を利用する場面を活用し、市民の「想い」を届ける取り組みです。市民が「ネギー」を利用することで、地域の活動やプロジェクトを支援することができます。

ネギーウィル20%ポイント還元キャンペーン

画像引用:深谷市公式ホームページ(キャンペーンは終了しています)

行政サービスへの活用

「ネギー」は、子育て支援金や住宅等防犯対策補助金、敬老祝い金など、行政からの給付金の支給手段としても活用されています。

ネギー0歳児子育て支援金

画像引用:深谷市公式ホームページ

これにより、よりスムーズかつ地域内での消費に繋がりやすい形で支援が行われています。

民間事業者との連携

民間企業も「ネギー」のシステムを活用し、独自のポイントキャンペーンを実施することが可能です。

システム利用料がかからず、還元ポイント分のみの費用負担で済むため、これまでポイント事業の導入が難しかった商店街や個人店でも比較的容易に導入できるようになり、地域全体の活性化に繋がっています。

個人間送金機能

アプリユーザー同士であれば、対面でQRコードを読み取ることで、「ネギー」の残高やポイントを送金できます。

1回あたり2万円まで、1日5回(最大10万円)まで送金が可能で、手数料はかかりません。これにより、市民同士でのネギーのやり取りがスムーズに行えるようになっています。

ギフトカードとしての活用

「ネギー」は、カードタイプをギフト用として贈ることもできます。

入学や誕生日などのお祝いに、「ネギー」カードをプレゼントとして贈ることで、深谷市内での利用を促し、地域経済の活性化に貢献できます。ギフト用カードは使い切りタイプで、ポイント還元の対象外となります。

利用状況と利用者層

「ネギー」は多くの市民に利用されており、2025年6月現在のユーザー数は約68,000人で、昨年度の取引金額は約15億3,000万円にのぼります。

利用者層としては、40代が最も多く、次いで30代、50代と働き盛りの世代が中心です。男女比では女性の割合が高く、市内在住者が約7割を占めています。

具体的な経済効果の定量的なデータはまだ計測されていませんが、累計発行額が92億円を超え、その多くが市内で流通したことを考えると、一定の経済効果があったと推測されます。

ネギー取扱店

画像引用:深谷市公式ホームページ

特にポイントバックキャンペーン実施時には、地元商店街の売上が大きく伸びたという声や、利用者の半数以上が深谷市内の店舗を優先的に利用するようになったというアンケート結果もあり、域外への資金流出抑制に貢献していると考えられます。

デジタル地域通貨の可能性

深谷市は、「ネギー」を通じて地域経済の活性化や地域課題の解決を目指し、持続可能な自治体経営の実現に取り組んでいます。デジタル地域通貨の最大の利点として、消費者の行動を可視化できる点が挙げられます。

将来的には、個人認証機能などと組み合わせることで、行政の情報発信をパーソナライズしたり、施策立案の判断材料として活用したりといった可能性も秘めています。

今後は、公共施設での利用拡大なども検討されており、「ネギー」の活用範囲はさらに広がっていく見込みです。

深谷市の地域通貨「ネギー」は、地域経済を元気にするだけでなく、市民の主体的な参加を促し、共に地域をより良くしていくための重要なツールとして進化を続けています。

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