南種子町の電子地域通貨「あば!Pay」で町内経済を活性化! キャッシュレスも普及促進

鹿児島県の南、種子島の最南端に位置する南種子町では、地域内の経済を活性化し、あわせてキャッシュレス決済の普及を目的とした電子地域通貨事業を導入しています。
その名も「あば!Pay」。町民の生活に寄り添いながら、地域経済の循環を促すこの取り組みについて詳しくご紹介しましょう。
お話を聞いた方
園田 洋仁
2001年南種子町役場に入庁し、2020年 から企画課デジタル推進係の係長として、電子地域通貨「あば!Pay」の導入・普及等、電子地域通貨の推進に従事。
Content目次
「あば!Pay」とは? 南種子町が目指す地域活性化とキャッシュレス普及
南種子町が2023年8月21日にスタートした「あば!Pay」は、町内限定で使える電子地域通貨です。
町内での消費を促し、地域経済の活性化を図るとともに、現金に慣れていない方にもキャッシュレス決済の利便性を体験してもらうことで、デジタル化への一歩を後押ししています。
「あば!Pay」の仕組みと利用方法
「あば!Pay」は、専用の「カード」またはスマートフォン「専用アプリ」を使って利用できます。どちらを選んでも、町が登録した加盟店で決済が可能です。

画像引用:南種子町「あば!Pay」利用ガイド
利用方法:カードまたはアプリを提示
利用方法は簡単です。加盟店のレジで、「あば!Payカード」裏面のQRコード、またはスマートフォン専用アプリに表示されるQRコードを提示すれば決済できます。

現在は、加盟店に設置された端末にQRコードをかざすことで支払いが完了しますが、今後は、利用者がスマートフォンでお店のQRコードを読み取って決済する方式(MPM決済方式)の導入も予定されています。
チャージ方法:現金チャージとチャージボーナス
「あば!Pay」を利用するには、事前にチャージ(入金)が必要です。チャージは現金のみに対応しており、町内2箇所に設置された専用チャージ機か、チャージ可能店舗で行うことができます。

画像引用:南種子町公式サイト
1,000円単位でチャージでき、1回のチャージ上限額は45,000円、保有限度額は100,000円となっています。
嬉しい特典として、チャージ時にはチャージ金額の1.0%分のチャージボーナスが即時付与されます。例えば、40,000円チャージすると400円分のボーナスが付与されるので、お得に利用できます。
利用できる場所:町内の加盟店
「あば!Pay」は、南種子町内の「あば!Pay」加盟店として登録されている店舗で利用できます。
加盟店には下のようなステッカーが表示されていますので、目印にしてください。

画像引用:南種子町公式サイト
現在の加盟店舗数は69店舗(2025年3月31日現在)で、今後も順次追加される予定です。
利用店舗の業種別内訳を見ると、小売店が約88%と最も多く、サービス業が約7%、飲食店が約1%となっています。
カードの種類:町民向けと観光者向け
「あば!Pay」には、町民向けのカードと観光者向けのカードの2種類があります。観光者向けカードは、3つのデザインから選べるようになっており、ふるさと納税の返礼品としても入手できます。

画像引用:楽天ふるさと納税
これにより、町外からの観光客にも「あば!Pay」を利用してもらい、町内での消費を促す取り組みを進めています。
ポイント機能:自治体ポイントも集約
「あば!Pay」では、自身でチャージしたマネーに加え、自治体が実施する各種ポイント事業によるポイントもまとめて管理・利用できます。

現在運用されている自治体ポイントには、「国民健康保険ヘルスアップ・よかよかポイント事業」「高齢者元気度アップ・ポイント事業」「介護人材確保ポイント事業」などがあります。これらのポイントも「あば!Pay」に集約されるため、便利に利用できます。
ポイントの有効期限は、自治体ポイントの場合は最終利用日から2年間となっていますが、各種ポイントは、有効期限が近いものから自動で利用される仕組みになっており、期限切れによる失効を防いでくれます。
「あば!Pay」の運営体制と費用
「あば!Pay」は、南種子町が運営主体となり、システム開発事業者やシステム運用事業者のサポートを受けて運営されています。
運営コストは、自治体の予算や加盟店舗から得られる加盟店手数料の一部、国の補助金などを主な財源とし、加盟店手数料は店舗側の負担が少ないように設定されています。
「あば!Pay」の利用状況と効果
導入から約1年半(2025年4月1日現在)が経過し、「あば!Pay」の利用状況も明らかになってきました。カード保有者数は延べ6,049人、そのうち利用者数は約3,000人です。年間の取引件数は約49,000件、取引金額は約6,980万円に上ります。
利用者の年齢層は、20代未満の子ども世代を除けば、どの世代でも同じような利用率を示しており、高齢者でも問題なく利用できているようです。
社会効果としては、これまで現金主義だった方々が、「町の事業だから」と地域経済への貢献をきっかけに利用を始めたケースもあり、キャッシュレス決済の普及推進に一定の進捗が見られます。
また、給付金などを「あば!Pay」で支給することで、これまで1カ月半かかっていた支給期間が半月ほどに短縮され、印刷料や郵送料といったコストも削減できています。既存の自治体ポイント事業を置き換えた際にも、同様の早期給付や事務の低減が図られています。
「あば!Pay」の課題と今後の展望
順調に利用が進む「あば!Pay」ですが、現時点ではいくつかの課題も存在します。
しかし、利用者や加盟店の声に耳を傾け、キャッシュレス決済が普及する社会の中で、「あば!Pay」は地域ならではのオンリーワンの取り組みを目指し、利用者や加盟店の拡大に注力しながら、安定的な運営を続けていく方針です。
利用者や加盟店からの声
利用者からの要望としては、チャージ方法が現金のみであることの不便さや、利用可能店舗のさらなる拡大が挙げられています。
また、加盟店からは、利用者増加につながる取り組みへの期待の声が寄せられています。非加盟店からは、導入コストや手数料負担が加盟のハードルになっているという意見も出ていました。
今後の展望
これらの課題に対し、南種子町では今後の展開として、チャージ方法の拡充(銀行チャージなど)やチャージ機の増設、MPM決済方式の追加、他のポイントサービスとの連携、さらには公共料金支払いへの対応なども検討しています。
また、住民向けカードを公共交通機関での乗車にも利用可能にしたり、各種ポイントと連携させたりする取り組みも模索しています。
さらなる利用促進のため、高齢者向けの利用講習会を実施したり、イベントに合わせたチャージキャンペーンを行ったりしています。
万が一の時の対応とカードの取り扱い
「あば!Pay」の利用中に困ったことがあった場合は、速やかに「あば!Pay事務局」に連絡をお願いします。特に、カードの紛失・盗難や身に覚えのない利用があった場合は、早急な対応(停止措置や調査)が必要です。
不要になったカードは事務局へ返却できますが、その際に残高があっても換金・返金はできません。カードを破棄せず保管しておけば、新たな給付金やポイント事業等で再び活用される可能性があるため、保管しておくことを推奨しています。
南種子町の「あば!Pay」は、地域経済の活性化とキャッシュレス化を両立させるユニークな取り組みです。今後の機能拡充や利用拡大にも期待が集まります。
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