「腐るお金」!? 新宮CoCoスクエアの地域通貨「CoCoコイン」が描く未来

福岡県新宮町にある、レンタルスペース「新宮CoCoスクエア」では、独自の地域通貨「CoCoコイン」を導入し、地域経済の活性化とコミュニティ形成を目指しています。
「CoCoコイン」は「腐るお金」という概念を取り入れているとのことですが、「腐るお金」とはいったい何なのか!?そのユニークな仕組みと、地域にどのような変化をもたらしているのかについて詳しく聞きました。
お話を聞いた方
平井良明
1995年、大学院在学中に起業。現在、株式会社イーハイブ代表取締役、一般社団法人中小企業事業推進機構 代表理事。週2正社員制度の提唱者として、多様な働き方を推進。福岡県新宮町の新宮CoCoスクエアを拠点に、起業支援やレンタルボックス運営、キャリアセミナーを展開。地域経済を活性化する"腐るお金「CoCoコイン」"の導入や、クラウドファンディングを活用した事業支援にも注力。シンプルな言葉でマーケティングやマネジメントを伝え、個人や中小企業の成長をサポートしている。
Content目次
CoCoコインとは? 新宮CoCoスクエアが導入した地域循環通貨

画像引用:株式会社イーハイブ公式サイト
「CoCoコイン」は、2024年8月から本格導入された、新宮CoCoスクエア内で利用できるスマートフォンベースのデジタル地域通貨です。


▲Pokepayアプリ内「CoCoコイン」
運営は一般社団法人中小企業事業推進機構が担い、システムには株式会社ポケットチェンジの「Pokepay」を採用しています。
※Pokepayは、店舗等で独自の電子マネーを発行・管理できる仕組み
導入の背景と目的
「CoCoコイン」導入の大きな目的は、地域内での経済循環の促進と、施設運営の効率化・安全性の向上です。
特に、レンタルボックスの店長が日替わりで変わるという運営形態において、現金の管理に伴う負担やリスクを軽減するためにキャッシュレス化が求められていました。
「CoCoコイン」は、このニーズに応える形で誕生し、さらに失効ポイントの再利用による施設維持費のカバーやコミュニティ活動の支援といった目的も兼ね備えた決済ツールです。
「腐るお金」のユニークな仕組み
「CoCoコイン」の最大の特徴は、「腐るお金」という概念です。チャージされた「CoCoコイン」は3ヶ月で失効しますが、失効した分の80%は、その期間中に「CoCoコイン」を多く利用したユーザーに再分配されます。
この仕組みは、コインを貯め込まずに積極的に利用することを促し、地域内での経済活動を加速させることを狙っています。
CoCoコインの具体的な仕組みと利用方法
「CoCoコイン」は、施設内の専用チャージ機からチャージ可能で、クレジットカードからも可能です。決済はスマートフォンのQRコード読み取りで行います。


画像引用:新宮CoCoスクエア公式サイト
現在は新宮CoCoスクエア館内のレンタルボックス、セミナー受講料、コーヒーサービスなど、多様なサービス・商品の支払いに利用可能です。
キャッシュレス決済による利便性
「CoCoコイン」の導入により、施設運営者、レンタルボックスオーナー、利用者のそれぞれの利便性が向上しました。
日替わりで店長を務めるオーナーは現金管理の負担から解放され、盗難リスクも軽減されます。利用者はお釣りの心配なくスムーズに支払いができるほか、購入履歴がシステムで管理されるため透明性も確保されています。
失効ポイントの再利用と地域への還元
3ヶ月で失効した「CoCoコイン」は、無駄になるのではなく、地域社会に還元される仕組みです。
失効分の20%は施設維持費(清掃、システム維持、寺子屋活動など)に充てられ、80%は利用額に応じてユーザーに再分配されます。

画像引用:株式会社イーハイブ公式サイト
この仕組みによって、利用者が「CoCoコイン」を使うことで直接的に施設の維持やコミュニティ活動の支援につながるという意識を生み出し、地域への貢献という利用者の実感につなげていく狙いです。
導入による効果と今後の展望
導入初年度ながら、「CoCoコイン」は利用者数・取引件数ともに順調に伸びており、施設内での経済循環を促す一定の効果が見られています。
特に、レンタルボックスでの購入やイベント参加費の支払いに利用されるケースが多く、小規模ながらも継続的な利用が進んでいます。
経済効果と社会効果
「CoCoコイン」の導入は、施設内の購買回数や再来訪者の増加につながり、また、現金管理が不要になったことで、レンタルボックスの新規オーナー獲得にも貢献しています。
また、単なる決済手段としてだけでなく、「応援」や「感謝」の気持ちを可視化するツールとしても機能しており、使いきれなかったコインを「どこかで使ってほしい」と託す利用者も現れるなど、利用者間の善意の循環や心理的なつながりを深める社会効果も生まれています。
運営上の課題と対応
運営上の課題としては、スマートフォンの操作に不慣れな利用者へのサポートや、再分配ルールの分かりやすさなどが挙げられます。
これに対し、スタッフによる丁寧な導入支援や、図解入りチラシ・動画コンテンツの整備が進んでいます。
また、システム運用コストは現在の自己資金で賄っていますが、今後は利用拡大による事業性の確立を目指しています。
今後の展開
「CoCoコイン」は、今後さらに利用しやすい、地域に根差した通貨へと進化していく予定です。
単なる決済ツールではなく、地域社会の価値観や「応援」といった非金銭的価値を循環させる"次世代の経済ツール"としての可能性を追求していきます。