山形県大蔵村の地域通貨「くらポ」とは? 地域経済を活性化するデジタルマネー

山形県最上郡に位置する大蔵村。豊かな自然に囲まれたこの村で、地域内の経済循環を促進し、住民の活動をさらに慎重にするための取り組みとして、最上郡6市町村で唯一、地域通貨の先駆けとして導入されたのが「くらポ」です。
コロナ禍を経て、地域経済の活性化やキャッシュレス決済の普及、そしてデジタル化への意識向上を目指して誕生した「くらポ」は、村民の暮らしに寄り添いながら、新たな可能性を広げています。
現在は、観光地である肘折温泉街を中心に、今まで少なかった若年層の観光客を呼ぶ
大きな目玉事業となり、村の大きな期待となっております。
お話を聞いた方
佐藤 克也
1984年大蔵村役場に着任。保健事業、農村整備事業等に多く携わる。2020年から危機管理室長、2024年から新設されたデジタル推進室長の併任となる。
Content目次
「くらポ」導入の背景と目的
「くらポ」が誕生した背景には、コロナ禍による消費活動の低下と、それに伴う地域経済の停滞がありました。この状況を打ち破り、村に活気を取り戻すことが課題となっていたのです。
デジタル化への移行
「くらポ」は、これまで紙ベースで行われていた商会スタンプ会のポイントをデジタル化することや、肘折温泉への観光客増加の目標を持ってスタートしました。
デジタル田園都市構想事業の中で、マイナンバーカードの普及率が高かった大蔵村だからこそ実現できた、先進的な取り組みといえるでしょう。
村民の活動をインセンティブに
もう一つの「くらポ」導入の目的は、村民が村の企画事業や健康増進施設に積極的に参加するきっかけを作ることです。
人間ドックや健康教室への参加、村内の日帰り温泉の利用など、村が推奨する活動に参加することで「くらポ」がもらえる仕組みは、村民の健康維持や交流を促進しています。

画像引用:「くらポ」公式サイト
「くらポ」でコロナ禍以前のような前向きな人の動きや消費を生み出し、村全体のエネルギーを高めたいという願いが込められています。
「くらポ」の仕組みと使い方
「くらポ」は、スマートフォンまたはQRカードを使って、村内の加盟店舗で利用できる仕組みです。シンプルでわかりやすい仕組みで、多くの村民に利用されています。

画像引用:「くらポ」公式サイト
登録と多彩なポイント獲得方法
利用を開始するにはまず、「くらポ」サイトでの利用者登録が必要です。
ポイントは、村の事業への参加や、村内施設の利用で獲得できます。
獲得したポイントは、配布されるURLやQRコードでチャージでき、加盟店で利用可能です。
2つの便利な決済方法
決済方法は2種類あります。
- スマートフォンを使った方法:利用者が店舗に提示されたQRコードをスマートフォンで読み取って決済を完了します

画像引用:「くらポ」公式サイト
- QRカードを使った方法:店舗側が利用者のカードに表示されたQRコードを読み取ることで決済されます。

画像引用:「くらポ」公式サイト
利用できる場所と対象者
「くらポ」は、村内の35店舗の加盟店で利用できます。 (2025年6月現在)
飲食店や商店など、さまざまな業種の店舗が含まれており、日常の買い物から特別な利用まで幅広く対応しています。


画像引用:「くらポ」公式サイト
「くらポ」の利用状況と効果
「くらポ」の導入以降、地域にデジタル決済が浸透するとともに「地域通貨」に対する意識も変わってきているようです。
利用者の広がりと経済効果への期待
「くらポ」の利用者の年齢層は50代が最も多く、次いで40代、60代と、広い世代に利用が認められています。
利用者のおよそ半数が村内在住者であり、地域住民の利用が中心ですが、観光客の利用も多くなっています。

地域住民の意識変化と観光促進
「くらポ」の導入は、住民の「デジタル体験」への意識を高める効果も生まれています。 「地域通貨を使ってみたい」「デジタル決済に挑戦してみよう」といった前向きな気持ちが芽生え始めています。
運営体制と今後の展望
「くらポ」の運営は、大蔵村と最上南部商工会大蔵事務所が連携しておこない、運営コストは村が負担しています。
今後の課題に対しては積極的に解消し、「くらポ」事業と地域経済の活性化を目指しています。
高齢化とデジタルデバイドへの課題
運営上の課題としては、電子決済システムの導入に抵抗がある店舗が存在することが挙げられます。
実際、「くらポ」未導入店舗からは、操作や決済の簡素化を求める要望も上がっていて、利用拡大の重要なポイントとなりそうです。
これに対し、村民向けのデジタル講習会を開催し、デジタル機器の使い方や有効性を伝えることで、デジタルデバイドの解消に取り組んでいます。
利用者・加盟店の声と今後の機能次第
利用者からは、利用可能店舗の拡大や現金でのチャージ機能追加を求める声が寄せられていて、さらなるサービス強化が期待されています。
「くらポ」の広報活動と観光客へのアプローチ
「くらポ」利用促進のため、村では、広報誌や防災タブレットを活用した広報活動に力を入れています。
さらに、商工会と連携し、各店舗へのポスター掲示なども行いました。
また、観光客の利用促進策として、村内の各旅館の部屋に「くらポ」の詳しい使い方や登録方法を記載したチラシを配布しています。
まとめ
大蔵村の地域通貨「くらポ」は、コロナ禍からの経済回復、村民の活動促進、そしてデジタル化の推進という複数の目的を考えて導入されました。
運営上の課題もありますが、デジタルデバイド対策や利用者・加盟店の声に耳を傾けながら、機能や利用を促進する姿勢は、地域に根差した通貨としての将来性を感じさせます。 今後、「くらポ」がどのように進化し、大蔵村の未来を作っていくのか、注目が集まります。
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