木更津市「アクアコイン」の魅力と特徴とは?決済ツールを超えて市⺠とともに進化するコミュニティツールに

千葉県木更津市で2018年から始まった電子地域通貨「アクアコイン」。
中心市街地の空洞化や商店街の衰退、コミュニティ意識の希薄化といった地域課題の解決を担う、単なる決済手段ではない「まちづくりツール」です。
行政・金融機関・商工会議所・IT企業が一体となり、地域活性化を推進するアクアコインの魅力について、担当者へのインタビューを交えて詳しく解説します。
インタビューにお答えいただいた方
島村 領一
2006年木更津市役所に入庁し、地方創生総合戦略策定やオーガニックシティ推進等に携わる。2020年 から経済部産業振興課の係長として、電子地域通貨「アクアコイン」の普及等、商工労政施策の推進に従事。
Content目次
電子地域通貨「アクアコイン」とは
アクアコインは、木更津市で2018年に始まった、君津信用組合‧木更津市‧木更津商工会議所が連携して普及に取り組む電子地域通貨です。
スマートフォンアプリをダウンロードし、1円=1コインとしてチャージすることで、木更津市内の883店舗(R6年12月31日時点)の加盟店でキャッシュレス決済が可能です。
基本的にはアプリをダウンロードするだけで、手軽に利用できるスマホ決済(アクアPay)ですが、キャッシュレスをより追求したい方に向け、君津信用組合の口座と連携することで、高額決済や電気代の支払いが可能となる「アクアBank」も用意しています。
特徴・機能 | アクアPay | アクアBank |
ご利用限度額 | 10万円 | 200万円 |
コイン有効期限 | 1年間 | 3年間 |
窓口チャージ | 〇 | 〇 |
チャージ機利用 | 〇 | 〇 |
プリペイドカードチャージ | 〇 | × |
コイン送金機能(割り勘機能) | 〇 | 〇 |
アクアコインでんき | × | 〇 |
出典: アクアコインサービスページ
アクアコインの加盟店と使い方
アクアコインの決済は、スマホアプリでQRコードを読み取り、利用金額を入力するだけです。
飲食店やコンビニ、スーパー、ドラッグストアなど、市内のさまざまな加盟店で利用できます。
利用できる店舗は、アプリ内の「探す」から地図とともに確認できます。

アクアコインは、アプリにコインをチャージすることで利用でき、専用のチャージ機やセブン銀行ATMでチャージすることができます。
また、利用者の声を受けて導入された、銀行口座からのオンラインチャージにより、利便性が大幅に向上しました。
<チャージ方法>
- 窓口でチャージ(君津信用組合)
- チャージ機(市内9か所に設置)やセブン銀行ATMを利用
- プリペイドカードでチャージ(アクアPayのみ)
- 普段お使いの銀行口座からチャージ

銀行口座チャージとは、普段お使いの銀行口座を登録することで、口座からの引き落としにより、「時間や場所を問わず、現金を用意することなく」アプリ上でチャージできる機能です。
銀行口座からのチャージは、以下の3ステップで設定できます:
ステップ | 必要な準備物 | 備考 |
①本人確認審査申請 | ・携帯電話番号
・身分証明書(運転免許証など) |
審査は最短当日~数日 |
②銀行口座登録 | ・通帳またはキャッシュカード
・暗証番号 ・ワンタイムパスワード |
登録する金融機関により必要なものが異なる |
③チャージ実行 | - | 金額を入力して即時チャージ可能 |

①本人確認審査申請
口座を登録するため、本人確認を行います。
ご本人様と身分証明書の写真を撮影し、身分証明書の記載内容を入力して申請します。
審査は、最短当日〜数日かかります。
【必要なもの】
- 携帯電話番号
- 身分証明書(運転免許証、運転経歴証明書、マイナンバーカード、在留カード、特別永住者証明書のいずれか)
②銀行口座登録
続いて、銀行口座を登録します。
「①本人確認審査」で登録した方名義の口座を登録できます。
通帳、キャッシュカード、暗証番号、ワンタイムパスワードなどの情報が必要になります。
【必要なもの】(金融機関によって異なります)
- 通帳、キャッシュカード
- 暗証番号、ワンタイムパスワード ほか
③チャージ
銀行口座登録が完了すると、チャージができるようになります。
金額を入力してチャージすると、口座からお金が引き落とされ、アクアコインにチャージされます。
口座からのチャージに対応している金融機関や、各登録の詳細な手順は
アクアコインのサービスページをご覧ください。
単なる決済手段ではないアクアコインの特徴とは
「アクアコイン」を利用するメリットは、キャッシュレス決済の利便性を享受することはもちろん、 街の経済や地域のつながりを市⺠みんなでつくっている実感を得られる点でしょう。
たとえば、アクアコインの特徴的な取り組みの一つが、「1% for Children」です。

この取り組みは、運営側ではなく市⺠からの提案を受けて実現したもので、 アクアコインが市⺠の「街づくり」の意識に深く浸透している事例といえます。
この仕組みでは、子どもたちや地域の未来のためならと、趣旨に賛同した加盟店が アクアコインでの年間売上額の1%を寄付し、 その資金が市内の学校給食の地産地消化やオーガニック化に活用されます。
現在、72店舗が参加しており、これらの取り組みは地域の子どもたちの健康や学びの環境を向上させるだけでなく、 食品ロスの削減や環境コスト低減、地域の有機農業の推進など、 地域全体にとっても大きなメリットをもたらしています。
ほかにも、PTAの会費をアクアコインで集められないか、といったような提案を受け実現するなど、 市⺠が積極的に市政に関わる動きもあります。
島村さん: 我々運営側が頑張るだけでは地域通貨は盛り上がらない。市⺠の主体性が重要なんです。
また、歩数計と連動して、一定の歩数を達成したらポイントがもらえる 「らづFit」という機能もあり、市⺠の健康増進にも利用されています。
アクアコインは、地域のつながりの活性化や健康増進などのツールとしても広がっています。
「アクアコイン」の未来、そしてデジタル地域通貨の可能性
アクアコインは、サービス開始から6年目を迎えた現在も、さらなる普及と発展を目指してさまざまな取り組みを展開しています。
今後は、加盟店同士のアクアコインによる取引を拡大し、特に市が、各種団体への補助金や委託料の支払いなど、積極的にアクアコインを活用することで、地域内での資金循環の促進を計画しています。
また、市や君津信用組合、木更津商工会議所の職員の給与の一部をアクアコインに自動チャージする取組も行っており、今後は市内の事業者へも展開できるよう検討していきたいとのことでした。
キャッシュレス決済ツールから地域経済やコミュニティ活性化ツールへと進化しているアクアコインは、地域通貨の普及促進に課題を抱えている他の自治体にとっても大いに参考になりそうです。
アクアコインに関するよくある質問
Q:アクアコインは観光客でも利用できますか
A:市外にお住いの方でも利用できます。今後は、市のイベントなどでアクアコインを付与するなどの取り組みも考えています。
Q:高齢者でスマホの使用が不安なのですが、使えますか?
A:公⺠館でスマホ講座を開催していますので、ぜひご参加ください。