御殿場市「富士山Gコイン」:経済循環と地域活性化を促進

御殿場市「富士山Gコイン」

静岡県御殿場市が発行する地域通貨「富士山Gコイン」が、市民生活に急速に浸透しています。

コロナ禍を契機に誕生したこの通貨は、単なる決済手段にとどまらず、地域経済の活性化に寄与し、市民からも高い満足度を得ています。

本記事では、「富士山Gコイン」の導入背景や仕組み、利用状況、そしてその魅力について詳しく解説します。

北村和也

平成20年に御殿場市役所へ入庁。令和3年度より商工振興課の職員として商業を担当。御殿場市デジタル地域通貨「富士山Gコイン」の発足から普及拡大までをリード。富士山Gコインのリードオフマン。

Content目次

富士山Gコインとは?コロナ禍を乗り越えるための地域発デジタル通貨

「富士山Gコイン」は、国を挙げたDX(デジタル・トランスフォーメーション)推進の流れを背景に、2021年から導入の検討が始まりました。

当初はプレミアム商品券事業のデジタル化を目指していましたが、庁内での議論を重ねた結果、御殿場市全体で利用できるデジタル通貨として発行されることが決定しました。

コロナ禍で推奨されたタッチレス決済の普及も追い風となり、地域内経済の循環を促す新たな施策として誕生しました。

利用はスマートフォンアプリまたは専用カードを通じて行い、市内の加盟店でキャッシュレス決済が可能です。

富士山Gコインの仕組みと使い方

誰でも手軽に利用開始できるのが「富士山Gコイン」の魅力です。

選べる2つの利用方法

利用方法は、スマートフォンをお持ちの方向けの「アプリ決済」と、スマートフォンが苦手な方でも安心な「カード決済」の2種類が用意されています。

これにより、デジタルデバイド(情報格差)にも配慮し、幅広い年代の市民が利用できる体制を整えました。

  • スマートフォンアプリ: 専用アプリをダウンロードして利用します。
  • 専用カード:市役所などで申請すれば、誰でもカードを受け取ることが可能です。

富士山Gコインの使い方

画像引用:カードからアプリへの残高移行 – 産業・ビジネス

チャージ方法と使えるお店

チャージは、市内のスーパー「サンサンクック」各店や「エピ・スクエア」、全国のセブン銀行ATMで現金で行うことができます。1,000円単位でチャージでき、繰り返し使えるのが特徴です。

利用可能な店舗は市内に約400店舗あり、飲食や買い物など、日常の様々な場面で活躍します。

使えるお店には「富士山Gコイン」ののぼり旗が立っているため、市内を歩けばすぐに目に付くでしょう。

富士山Gコインのセブン銀行でのチャージ方法

画像提供:御殿場市

暮らしを応援!ポイントが貯まるお得な活用術

「富士山Gコイン」の大きな特徴は、決済だけでなく、市の施策と連携してポイントがもらえる機会が豊富な点です。例えば、市はライフステージに応じた応援事業として活用しています。

  • 出産・子育て応援: 出産祝いや子育て支援として「富士山Gコイン」を給付。
  • 小・中学校等入学祝: 小・中学校等へ入学する児童・生徒を養育している保護者を対象に「富士山Gコイン」で入学祝金を支給。
  • 結婚応援: 新たに結婚した夫婦にお祝いとして「富士山Gコイン」をプレゼント。

これらの施策により、現金給付よりも早く対象者へ支援を届けられるようになりました。

また、市民にとっては、お祝い金を地域の店舗で使うことで、自然と地域への貢献にもつながるという利点があります。

対象者と注意点

お得なプレミアムが付与されるキャンペーンは御殿場市民に限られますが、通常チャージでの利用は市外にお住まいの方も可能です。

なお、マネーロンダリング対策の観点から、月の入金上限額は10万円と定められています。利用者からは「上限を上げてほしい」という声も寄せられており、今後の検討課題の一つとなっています。

驚きの利用状況と地域への効果

「富士山Gコイン」は、多くの市民に利用され、地域に大きなインパクトを与えています。

富士山Gコイン

画像引用:富士山Gコイン

登録者5.5万人!総発行額9億円超の実績

2025年4月1日現在、利用者登録数は約5万5千人に達し、御殿場市の人口比で6割を超えるという高い普及率を誇ります。

2024年度の総発行額は9億3千万円、取引件数は約50万件に上り、地域内で活発な資金循環が行われていることがうかがえます。

利用者層は特定の年代に偏らず、ほぼすべての世代で平均的に利用されており、男女比も男性2に対して女性2.5と、幅広く浸透している点が特徴です。

経済効果は約42億円!市民満足度もNo.1

御殿場市の試算によれば、事業開始から2025年3月31日までの経済効果は約42億円に上ります。

この成果は市民の評価にも直結しており、利用者からは「ポイントが貯まりやすくてお得」「現金を使わずスムーズに支払える」などの好意的な声が寄せられています。

加盟店にとっても、「富士山Gコイン」の利用をきっかけに新規顧客の獲得や客単価の向上といった効果が生まれ、地域全体で好循環が形成されています。

その結果、2024年度の市民意識調査では、市の主要政策の中で「富士山Gコイン活用による経済活性化の取り組み」が最も満足度の高い施策として選ばれました。

富士山GコインのYouTube

画像引用:富士山Gコイン

広がる民間の活用と地域貢献

市の施策だけでなく、民間事業者が主体となったイベントでも富士山Gコインが積極的に利用されるようになりました。

これにより、行政だけでなく地域全体で通貨を育てていこうという機運が高まっています。

一方で、自治体の事務負担が増加するという副次的な課題も生まれましたが、それ以上に地域活性化への貢献という大きな成果を上げています。

富士山Gコインのキャンペーン

画像引用:富士山Gコイン

運営体制と今後の展望

行政が主体となって運営される「富士山Gコイン」ですが、利用者や加盟店の声に耳を傾け、常に進化を続けています。

運営の裏側と課題への取り組み

運営主体は御殿場市で、費用は市の予算と国からの補助金によって賄われています。各種施策は、庁内の企画・商工・財政部門が連携し、協議を重ねたうえで意思決定を行う体制です。

この事業の大きな特徴は、人口比6割超という高い普及率を実現している点にあります。

これは他の地域通貨にはない強みであり、給付金などの行政サービスを「富士山Gコイン」で提供する際、多くの市民に直接アプローチできるため、施策の効果を最大限に引き出しやすくなっています。

一方で、専用カードによる決済に対応している店舗がまだ少ないという課題もあり、これに対して市は、直接店舗を訪問して説明や協力依頼を行い、カード決済可能店舗の拡大を進めています。

公共料金の支払いへ!進化するGコイン

今後は、庁内の各種手数料を「富士山Gコイン」で支払えるようにするなど、行政サービスのさらなる向上を目指して検討が進められています。

基本的には市民向けの施策が中心ですが、民間での利活用をさらに推進することで、より多角的な地域活性化への貢献が期待されます

社会のデジタル化が進む未来において、富士山Gコインのような地域通貨は、ますます一般的で重要な存在となっていくでしょう。

まとめ

御殿場市の「富士山Gコイン」は、単なるデジタル決済サービスではありません。

高い普及率を武器に、行政サービスや地域活動と連携し、42億円もの経済効果を生み出す「地域活性化のエンジン」です。

市民の満足度という強い支持を背景に、これからも御殿場の暮らしを豊かにする独自の進化を遂げていくことでしょう。

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